和田高士(東京慈恵会医科大学新橋健診センター所長)
特定健診・特定保健指導は画期的な制度と考えています。これまでの保健指導は無料かつ付録のサービスでしたので、指導する側もやる気が出なかったのが現状でした。改善できないなら薬で対処すればいいーそのほうが時間も取られなくて済むし、儲かるし…。相手が改善できなくても、そんな“仕方ない”で終わっていたのではないでしょうか。しかし、医療費は増加する一方です。そして先進国の中で、日本ほど女性の寿命に比べ男性の寿命が短い国はほとんどありません。とくに60歳での平均余命は大幅に男性が短い。この差を埋めるには,増加し続ける男性の肥満者を減らすことが急務です。
メタボリックシンドロームの考え方はきわめて大切です。私は循環器医師として心筋梗塞の方々を多くみてきました。20年前CCU(心臓内科系の集中治療室)で働いていた頃、いくつかリスクファクターがあるが、どれも軽度の異常なのにどうして心筋梗塞をおこすのだろうか?といった症例が数多くありました。振り返ってみると、これがメタボリックシンドロームだったのです。
これまでは、こういった患者さんに対して健診結果を説明する際、“どれも軽度の異常だから心配ないですよ”としていたものが今年から一変し、“多くの異常があるので生活習慣を改善しましょう”というものへと変わることになります。しかし現実の指導の場では多くの困難や解決すべきことが山積しています。
今回のアンケートで多数の人が書いたこと、それは指導を受ける人が“無関心”であることです。「のれんに腕押し」とはこのことかもしれません。この問題に立ち向かうには、指導者が受け身では成功しません。1万分の1の地図を広げてどこをどれだけ歩いてみるか一緒に考えてあげる、自分で指導用のパンフレットを作ってみる、といった姿勢と営業努力が必要になってきます。方法は工夫次第です。たとえば、脂質異常症の人では、お勤めの施設にCT装置がなくても食後に採血させてもらい、時間をおいて採血管の写真を撮ってみてはいかがでしょうか。脂の浮いた血液の写真を見せると受診者の意識は一変します。
健康情報が氾濫していると言われる昨今、あれが健康にいいとか、これで病気が治ったなど、どれを信頼すればよいのか、また情報検索にのめりこむといくら時間があっても足りず、一般生活者のみならず、指導する側も、さまざまな場面で情報を見極める目が必要とされています。最小限の時間で的確かつ正しい情報を得ることはきわめて大切だからです。
今回の特定健診・保健指導についての情報も日々更新されており、素早く情報収集し、現場に反映させていかなくてはなりません。職域の仲間がどのように対処しているのか、全国の自治体や健保はどのように推進しているか、成功例や失敗例など、知りたいことは日々出てくるのではないでしょうか。メタボリックシンドローム撲滅委員会の「メタボリックシンドローム・ネット」「メタボリックシンドロームPro」は、こういった情報収集の際に、安心して活用できるものと思います。(事実、メタボリックシンドロームに関するホームページの評価ランキングでは、「メタボリックシンドローム・ネット」は患者向けで三ツ星(最高ランク)、「メタボリックシンドローム Pro.」は医師向けで三ツ星となっている(診断と治療96巻383-387,2008)。
特定健診・保健指導制度の下で力を合わせ、少しでも平均余命格差を埋められればと願っています。日本がメタボを撲滅したということを世界に発信できる日が来るよう、頑張りましょう。
調査概要・回答者の属性
総括 (和田高士先生)
総括 (鈴木志保子先生)
調査結果 |

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