生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、睡眠障害や歯周病などさまざまな影響を健康に及ぼしていることが新たにわかってきた。
メタボリックシンドロームの症状である高血圧症や糖尿病は睡眠障害を招く恐れがある、と指摘するのは、久留米大学医学部の内村直尚助教授ら。今年一月に男女約8,550人(35-59歳)を対象にアンケート調査を行い、このうち高血圧症、高脂血症、糖尿病の三つを抱えたグループ(156人)を詳細に調べたところ、不眠が約40%で健常者の約30%を上回り、最も多かった。
内村助教授らによると、不眠の原因は高血圧で、自律神経のうち交感神経を活発にさせるため、「体が休まらず、不眠に陥る」という。
高血糖も影響が大きい。同大学医学部の小路眞護講師が行った糖尿病患者(158人)の調査では、全不眠の割合は37%あり、健常者の二倍に上った。
小路講師は「糖尿病患者は常に食事、運動療法に取り組む必要があり、慢性的な欲求不満がある。患者は抑鬱(よくうつ)状態になり、眠りが不十分になる」と説明する。
このような状態が続くと、体内では脂肪細胞から分泌され、食欲を抑える作用があるホルモン「レプチン」の量が減り、逆の作用がある「グレリン」が増えてくるため、食欲が増進し、内臓脂肪が蓄積するという悪循環に陥ってしまう。
「生活習慣病の治療には食事、運動の療法とともに睡眠改善も加えるべきだ」と内村助教授らは指摘する。
口の中の病気である歯周病と糖尿病の関係も注目されている。
歯周病は、まず口内の歯肉と歯の間のすき間に細菌が入り込み、歯肉に炎症が起きる。そこは密閉状態になるので、歯磨きで菌を取り除くことができないまま細菌が増殖し、慢性の炎症になって歯肉など歯周組織が壊されていく。
糖尿病は全身に症状が出るので、口内では高血糖により血行が悪くなり、歯肉の表面に潰瘍(かいよう)などができ、細菌が進入しやすくなるなどして歯周病が合併することは知られていた。
ところが、最近になって、逆に歯周病が糖尿病の症状を悪化させていることが分かってきた。
こんな症例がある。五十歳代の男性は、歯周病であるとともに、五年前から糖尿病の治療を断続的に続けていたものの病気の進行を示す血糖値は下がらなかった。
そこで、歯周病の治療をして感染した細菌を除いたあと、糖尿病の投薬治療を行ったところ、わずか二カ月後には平均的な血糖値(HbA1c)などが、治療前の数値をはるかに下回った。
歯周病の治療が糖尿病を改善させたのだ。
日本歯周病学会の野村慶雄理事は「歯周病は口の中だけではなく、糖尿病、動脈硬化をはじめ、さまざまな全身の病気を起こりやすくしている可能性があります」と説明する。
その仕組みは、歯周病により歯肉の組織に炎症が起きると細胞から腫瘍壊死(しゅようえし)因子(TNF-α)など炎症を起こす物質が出され、血液中に入って全身を回る。この物質は肝臓を攻撃したり、メタボリックシンドロームの大本である内臓脂肪からアディポサイトカインといわれる炎症などを起こす悪玉ホルモンを分泌させたりして、糖尿病や高脂血症を起こし、動脈硬化につながっていく、という。
野村理事は「歯磨きを工夫するなど歯周病を防ぐことで、メタボリックシンドロームの症状の悪化を抑えることができるでしょう」と話す。
メタボリックシンドロームは、今後、多種の病気とのかかわりが示され、全体像が明らかになるだろう。糖尿病との関連では、目の網膜や腎臓の病気、ED(勃起障害)などが挙がっている。飽食社会が生み出した現代病を根底から撲滅し、健康な長寿社会を築くには、「先(ま)ず隗(かい)より始めよ」と自らを戒めて食生活の改善に取り組む強固な意思が必要だ。

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