【第2部】広がるメタボリックシンドロームの影響
  (3) 「尿酸は生体ナビゲーター」
2006.04.13

 足の指などに激しい痛みの衝撃が走る「痛風」の患者は、食生活が豊かになった昭和40年代から急速に増え始め、現在60万人とされている。原因物質である尿酸が血液中に高濃度で含まれ、痛風予備軍といわれる「高尿酸血症」の人は約六百万人にも上っている。

 自営業の40歳代の男性、Aさんは身長171センチ、体重72キロ、胴囲88センチとやや太り気味だったが、学生時代にラグビーの選手だったこともあり、健康には自信があった。ところが突然、右足の親指の付け根が赤く膨らみ、耐え難い激痛が走った。痛風の発作である。すぐに大阪府立成人病センターに駆け込んだ。

 痛風は高尿酸血症がひそかに進行した結果で、抗炎症薬の投与など治療により痛みはとれた。だが精密検査でもうひとつの症状が見つかった。

 内臓に脂肪が蓄積しているうえ、軽い高血圧、高脂血症、糖尿病を併発し、飲酒による脂肪肝も見られた。心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病を起こす動脈硬化につながる典型的なメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の状態だったのだ。

 同センターの中島弘臨床検査科主任部長は「痛風などで来院した患者に、併せてメタボリックシンドロームの見つかるケースが増えています」と説明する。

 痛風の原因は尿酸で、動物の内臓や魚の卵などの細胞の核内に多く含まれるプリン体という物質から肝臓内で老廃物として作られる。この尿酸は直接に動脈硬化を起こすわけではない。しかし、内臓に脂肪が蓄積していれば、脂肪組織から出た脂肪酸が肝臓に入り、中性脂肪が作られるのに連携して尿酸の合成が盛んになる。つまり、内臓肥満があれば、メタボリックシンドロームにより動脈硬化が進む際のいろいろな変化と同時進行で、血液中の尿酸値が上昇することになる。

 発症直前まで健康を過信していたAさんは、一転して積極的に生活改善に取り組んだ。血液中の尿酸を減らす治療に加えて、飲酒や食事の制限、運動量の増加を心がけ、血圧、血糖値などが正常化するかどうかを慎重に見極めた結果、快方に向かった。

 「尿酸値はメタボリックシンドロームの存在を示すバイオマーカー(生体指標)になり得ます。高尿酸血症の場合、体内で尿酸が過剰に合成されるケースと、できた尿酸が排泄(はいせつ)されにくいケースがありますが、内臓肥満なら前者が主体なので、薬による治療方針も立てやすい」と中島部長は強調する。

 生活改善優先の予防治療で、尿酸値の増減を目印にしてメタボリックシンドロームの進行の度合いを測り、一石二鳥の効果が上げられる。

 中島部長は、心筋梗塞など心臓病の患者が五年以内に再び発症する危険因子が、高血圧と高尿酸血症であることも明らかにしている。尿酸は、内臓肥満が起こす心臓病など動脈硬化の有力なマーカーといえるのだ。

 一方で、尿酸は重症になりやすい肝臓の病気のマーカーとしても注目されている。肝臓の細胞が線維化して機能が衰える肝硬変や、肝臓がんにつながるとされる非アルコール性肝炎(NASH)だ。

 これまで肝炎はB型、C型などウイルスが原因か、多量の飲酒などアルコールにより引き起こされるかどちらか、と考えられていた。ところが最近になって、どちらの原因でもなく、フォアグラのように肝臓に脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪肝から、細胞が炎症を起こしてNASHに移行し、さらに比較的高率で肝硬変につながりやすい例が増えていることがわかってきた。

 この病気も内臓肥満が主要な原因とみられ、高尿酸血症を合併することなどからみて、尿酸値の上昇は危険信号になる可能性が高い。

 「健康診断で簡便に測定できる尿酸値を内臓肥満関連の病気のマーカーとしてもっと活用すべき時期に来ています」(中島部長)

 メタボリックシンドローム関連の病気と不即不離の尿酸は、効率的な予防、治療のナビゲーターとして医療費削減にも大いに貢献するに違いない。



大正製薬
明治製菓
第一生命

    メタボリックシンドローム撲滅委員会とは メタボリックシンドローム撲滅運動キャンペーンの活動 メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛各社の取組み
最新情報
     ◆【参加申込受付中!】
     第29回肥満学会 市民公開講座
     「特定健診・保健指導はこわくない!
      -メタボリックシンドロームを予防・解消する生活習慣とは」

     日 時:2008年10月18日(土)15:00-17:00
     場 所: iichiko総合文化センター(大分)
     詳しくは>>
メタボリックシンドローム撲滅の意義
メタボリックシンドロームの治療
メタボリックシンドロームに関する諸学説
連載
委員会関連記事
松澤 佑次
(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
春日 雅人
(日本糖尿病学会理事長/国立国際医療センター研究所長)
松岡 博昭
(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学副学長)
北  徹
(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
齋藤 康
(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
渡邊 昌
(国立健康・栄養研究所理事長)
オフィシャルグッズ
情報交換
メールマガジン
メタボリックシンドローム・ネット
リンク集
100倶楽部
委員長
   松澤 佑次(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
委 員
   門脇  孝(日本糖尿病学会理事長/東京大学大学院教授)
   松岡 博昭(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学循環器内科)
   北   徹(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
   齋藤  康(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
   渡邊  昌(国立健康・栄養研究所理事長)
   中尾 一和(日本内分泌学会理事長/京都大学大学院医学研究科 内科学講座内分泌代謝内科教授)
   斉藤  勉(産経新聞社取締役編集・写真報道担当東京編集局長)
   大倉  明(産経新聞社総合企画室長)
   宮本 幸一(ニッポン放送常務取締役)
   中村 芳章(フジテレビジョン事業局長)
オブザーバー
   関  英一(厚生労働省健康局 生活習慣病対策室長)
   春日 雅人(国立国際医療センター研究所長)
   小林三世治(第一生命医長兼健康増進室長)
リーダー・総合監修
   宮崎 滋(東京逓信病院内科部長)
医学分野
   片山 茂裕(埼玉医科大学第4内科(内科学内分泌・糖尿病内科部門)教授)
   横出 正之(京都大学探索医療センター・探索医療臨床部長・教授)
   和田 高士(東京慈恵会医科大学新橋健診センター所長)
   柴 輝男(三井記念病院糖尿病代謝内科部長)
   中川 徹(日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長)
医療・保健指導分野
   津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長)
   野口 緑(尼崎市国保年金課健康支援推進担当課長補佐・保健師)
運動指導分野
   宮地 元彦(国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム運動ガイドライン プロジェクトリーダー)
   斉藤 満((社)日本ウオーキング協会事業局長)
   菅野 隆(健康創研代表・健康運動指導士)
食事指導分野
   鈴木志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科准教授)
   小野 真実(女子栄養大学食生態研究室講師)
   柴崎千絵里(東京女子医科大学病院栄養管理部)
メタボリックシンドローム撲滅委員会
産経新聞社
フジテレビジョン
ニッポン放送
フジサンケイ ビジネスアイ
厚生労働省
学会
日本肥満学会日本動脈硬化学会日本高血圧学会日本糖尿病学会日本循環器学会日本腎臓学会日本心臓病学会日本内分泌学会日本血栓止血学会日本歯科医学会日本歯周病学会日本抗加齢医学会日本CT検診学会日本人間ドック学会日本総合健診医学会日本食物繊維学会日本プライマリ・ケア学会
社団・財団・協会
日本医師会日本臨床内科医会日本歯科医師会日本栄養士会日本薬剤師会健康・体力づくり事業財団日本糖尿病財団日本心臓財団日本看護協会日本フィットネス産業協会日本製薬工業協会日本OTC医薬品協会日本生活習慣病予防協会日本健康運動指導士会全国保健センター連合会全国保健師長会日本ウオーキング協会日本健康スポーツ連盟健康保険組合連合会
協力団体
高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム
メディア
サンケイリビング新聞社扶桑社
協賛各社
第一生命保険相互会社 アステラス製薬株式会社 大塚製薬株式会社 オムロン・ヘルスケア株式会社
株式会社カイゲン 花王株式会社 科研製薬株式会社 キッセイ薬品工業株式会社
小林製薬株式会社 サノフィ・アベンティス株式会社 サンスター株式会社 塩野義製薬株式会社
第一三共株式会社 大正製薬株式会社 武田薬品工業株式会社 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
バイエル薬品株式会社 明治乳業株式会社
賛助企業
株式会社カーブスジャパン ・日本ケミファ株式会社