【第2部】広がるメタボリックシンドロームの影響
  (4) 「結石は動脈硬化の黄信号」
2006.04.14

 日本人の食生活の洋風化とともに生活習慣病の仲間入りをした病気のひとつに「尿路結石」がある。腎臓、尿管、膀胱(ぼうこう)など尿が作られ排泄(はいせつ)されるまでの通り道に結石ができてしまい、鋭い痛みが継続する。

 この結石が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の発症メカニズムの解明に重要な役割を果たす可能性が高まってきた。

 「結石の痛みがアラームになるでしょう」と郡(こおり)健二郎・名古屋市立大学医学部教授は予測する。

 結石の生成には、生活環境が影響していることは知られていた。欧州では、フランス革命や第一次大戦などで食生活の事情が悪化し、低カロリー食になると減少した。日本では戦後、衛生環境が向上したことから、病原菌感染で膀胱にできる結石が減り、逆に食事の内容により腎臓などにできるケースが圧倒的に増えた。

 これまで引き金になる栄養的な要因は、食事に含まれる動物性タンパク質とされていたが、むしろ脂質であり、糖尿病との関連が強く示唆されている。現在、日本人の生涯罹患率は100人当たり6人で、男性に多い。

 このように生活習慣病の発症を促すのと同じ環境の変化の中で多発し始めた尿路結石は、他の病気との関連が予想されたが、確証がつかめなかった。

 そこで郡教授は腎臓内で結石がつくられる仕組みを研究し、重要な物質を発見した。

 結石の成分は、ホウレンソウなどに多く含まれるシュウ酸が体内でカルシウムと結合したシュウ酸カルシウムなどの結晶である。ただ、結晶だけだと体液の中で角砂糖のように溶けてしまう。硬くなるのは、石垣をセメントで固めるように結晶同士を接着させる物質があるからだ。

 逆にいえば、接着役の物質を突き止めれば結石を溶かすことも容易になる。

 結石の生成は、まず腎臓の中で尿を濾過(ろか)する尿細管の細胞内で微細な結晶ができ、この結晶が細胞を壊して排出。これを核にカルシウムを含む結晶がくっつき、結石が肥大化する。

 郡教授は「最初に細胞内で結石が作られるのだから、接着物質もそこにあるはずだ」との発想で研究を重ねた。

 腎臓の機能にかかわる遺伝子DNAなどを調べた結果、「オステオポンチン」というタンパク質を突き止めた。この物質を体内で作ることができないマウスで実験したところ、結石が生じなかったことが裏付けになった。

 この物質はカルシウムと強く結合する。歯や耳(耳石)、骨など体の硬い組織でみられたが、血管にも含まれていたことは驚きだった。動脈の組織にカルシウムを沈着させて石灰化し、動脈硬化を起こす一因になっていたのだ。

 オステオポンチンをつくる遺伝子のパターンにより、結石を作りやすい体質があることも分かった。

 さらに、内臓の脂肪組織が肥大したときと同じように結石ができる際にも、善玉のホルモンであるアディポネクチンの分泌量が減少することを、郡教授らは明らかにした。

 「尿路結石患者については、30歳代の三分の一がすでに動脈硬化になっているというデータがあります。メタボリックシンドロームとの関連の解明は、予防医学の上からも有意義な研究になるでしょう」と郡教授は強調する。

 結石と動脈硬化が同時に退治できれば、生活習慣病対策は大きく前進する。新たな研究の展開を期待したい。



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