【第3部】(1)北徹・日本動脈硬化学会理事長に聞く
2006.07.04

まず食事・運動療法

 生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者が2,000万人に達し、その対策が緊急課題になってきた。関連医学会のリーダーに今後の方針を聞いた。日本動脈硬化学会理事長の北徹・京都大学副学長は、ハイリスク患者を絞り込み、食事、運動療法が有効でない場合に初めて薬物療法を行うことを強調した。(飽食社会取材班)

>>動脈硬化の危険因子としてメタボリックシンドロームがあるとわかったのはどのような経緯ですか

 血液中のLDL(悪玉)コレステロール値が高くなり、動脈硬化から心筋梗塞(こうそく)を起こすという発症の機構が1970年代から80年代にかけて、分子のレベルで解明された。その背景には、フラミンガムスタディー(1960年代に米国で行われた健康と生活習慣についての疫学調査)で、心筋梗塞の「危険因子」として総コレステロールが挙げられたことがある。この調査では他の「危険因子」として、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙もあることがわかってきて、どれか複数が一人に重なると心筋梗塞になりやすいという「死の四重奏」などの概念が出てきた。

 日本では、松澤佑次・住友病院長(大阪大名誉教授)が厚生労働省の研究班を組織し、就労期の男性で心筋梗塞になった人について、過去10年間のデータを調べてみたら、高血圧、血糖値を下げるインスリンの働きが落ちるインスリン抵抗性、さらに高脂血症も肥満度も、健常者に比べ少しずつ高いことが浮き彫りになった。

 重要なことは、コレステロールはすでに危険因子として確立されているので、これを除いた他の危険因子が重なっていればいるほど発症率が高まるということ。それは内臓脂肪蓄積を原因としたメタボリックシンドロームの原型となり、診断基準につながった。

                  ◇

 ■ハイリスク患者絞り込み

>>日本動脈硬化学会の動きは

 日本動脈硬化学会は、平成14年に動脈硬化性疾患診察のガイドラインを作成した際、悪玉コレステロール以外にも、糖尿病、高血圧、肥満など他のリスク要因も加え、それぞれの学会の基準に準拠したうえで場合分けし、きめ細かい内容にすることにした。ヒトは、複数のリスクが絡み合って動脈硬化が起こりやすくなっているという考えをはっきりさせたわけだ。

 高脂血症に関してはハイリスク患者を絞り込んでいく必要があるので、目安として、総コレステロールが220mg/dl未満、LDLコレステロールが140mg/dl未満、HDL(善玉)が40mg/dl以下、中性脂肪が150mg/dl以上とした。これによりハイリスク患者をみつけ、食事、運動療法などをしてだめだったら、初めて薬物療法を行う。

>>日本人のメタボリックシンドロームの診断基準の腹囲について疑問の声がありますね

 日本人はCT(コンピューター断層撮影)により測った内臓脂肪蓄積が断面積で100平方センチメートルを超えるとリスクの集積が高まることから、この値を基準にしたら男性は85センチ以上、女性は90センチ以上になったわけで、きちんとしたデータがある。この値は動脈硬化症に関連した8学会によるコンセンサスによっている。

 女性の90センチは目安だ。女性の場合は、内臓脂肪より皮下脂肪が多いケースがあり、どこまで絞り込めるかが、今後の検討課題だろう。

 また、女性は更年期になると動脈硬化による心筋梗塞が増えるが、この年齢の女性の診断基準も考えていくべきだろう。できるだけ幅広くハイリスク患者を見つけるという基準だから、今後、データに基づき、きめ細かく変えていけばいい。



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