【第3部】(6)後藤由夫・日本臨床内科医会会長に聞く
2006.07.11

1日6,000歩…糖尿病も予防

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は糖尿病のさまざまな原因のひとつであり、患者は予備軍を含め1,620万人を数える。日本臨床内科医会会長の後藤由夫・東北大学名誉教授は「内臓肥満に注意することは糖尿病の予防にもつながる」と力説した。

>>メタボリックシンドロームと糖尿病の接点は

 両者は重なっている部分が大きい。糖尿病は血糖値を下げるインスリンの分泌が悪くなり、血糖値が高くなる糖代謝異常の病気である。血糖値が高めならメタボリックシンドロームの診断基準の条件の一つに該当する。

>>肥満との関連は

 内臓脂肪型肥満がメタボリックシンドロームの診断基準の必須条件だが、糖尿病でも肥満が原因のタイプが増えてきている。メタボリックシンドロームに注意することは糖尿病の予防にもつながる。

>>臨床経験から見て肥満は増えているのでしょうか

 50歳代男性のBMI(ボディー・マス・インデックス、身長と体重から割り出した肥満度)をみると、戦後以来ほぼ一貫して右肩上がりで上昇してきた。逆に20-30代の女性の肥満は減ってきている。これはスタイルを良くするためスリムになることとの関係が考えられる。

>>肥満は摂取エネルギーに対し消費エネルギーが少ないために起きますが

 わが国の1人1日あたりのエネルギー(カロリー)摂取量を調べた。すると昭和25年には2,098キロカロリーだったのが、高度成長期の昭和46年には2,287キロカロリーに増加していた。ところが、これをピークに減り続け、平成15年は1,920キロカロリーだった。このためひと口に過食が原因といえない。

 詳しいデータはないが、運動不足が考えられる。このことは戦後以来、自動車保有台数が増えてきていることと関係があると思う。都市部では地下鉄など交通網が発達しており、乗用車を使えないことも多いため意外に歩行数が多い。だから、サラリーマン男性が50歳代には何も問題がなかったのに、退職後、通勤しなくなると急に肥満になるケースがある。半面、地方だと、どこへ行くにも乗用車を使わざるをえないので運動不足になる傾向がみられる。

>>肥満のコントロールはどのように

 毎週1回は体重をはかってほしい。体重が増えると必ず血糖値も上がる。しかし、血糖値が上がっても自分では痛みなどの自覚症状を感じないため、油断しやすい。糖尿病だけでなく、メタボリックシンドローム対策の点からも体重の管理が重要だ。

>>具体的な対策は

 激しい運動でなくてよい。高齢者は骨折などの心配もある。1日少なくとも6,000歩は歩く。これは心臓病予防にもつながる。

>>糖尿病は贅沢(ぜいたく)病ともいわれますが

 戦前は食べるものに苦労した時代だった。私自身も含めみんなが空腹で、このころ糖尿病はあまりなかった。諸外国でも同じことがいえるそうだ。しかし、戦後以降は糖尿病患者数は増えてきている。

 景気の動きと糖尿病の関連を調べたら、平成元年前後のバブル経済のころなど好景気の際に糖尿病が増える傾向があることが分かった。このため私は平和と繁栄の時代の病こそが糖尿病だと考えている。

>>メタボリックシンドロームにも同じことがいえますか

 平和と繁栄を維持しながら、いかにこうした病を減らしていくか、この矛盾をどう解くかだ。英知を集めて考えないといけないだろう。運動不足になってきたということは、人間が動かなくなってきたということだ。ヒトは動物であることが忘れられているように感じる。



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