【第5部】アジアの肥満とメタボリックシンドローム
  (3) 「診断基準、人種差を考慮」
2007.02.26

 韓国・ソウル市で開かれた「アジアオセアニア肥満学会議」には、多くの欧米の学者が訪れ、講演や若手研究者の指導を行った。経済の急成長により、欧米に続いて肥満が急増するアジアの状況は興味深いテーマで、参加者らは研究の進展状況や各国の肥満対策に耳をそばだてた。

 今回の学会でも、日本で肥満対策の柱になっているメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が取り上げられた。この症状は内臓の周囲に脂肪が蓄積したことが原因で高血糖、高血圧などのデータがわずかに上昇しても重複すれば、動脈硬化を起こす。これに関連して内臓脂肪が蓄積すれば減少する善玉ホルモンのアディポネクチンなど、科学的なメカニズムについても激しい論議が展開された。

 「病気はすべてさまざまな要素が複合して発症します。これまでは肥満、血圧、コレステロール値など、それぞれの検査値に対応する個別の病気が取り扱われていました。しかし今後は、肥満があれば同時に高血圧も生じるという総合的な視点から肥満の症状が扱えるメタボリックシンドロームを対策に取り入れる必要があると思います」

 オランダのジャープ・C・サイデル健康科学研究所教授はそう断言した。

 サイデル教授は、WHO(世界保健機関)の国際肥満対策研究班の中心メンバーとして報告書をまとめ、その中で腹部の肥満がチェックできるウエスト周囲径を重視した。この報告書は、その後のメタボリックシンドローム診断基準の作成する際に貴重な資料となった。

 アジア各国の診断基準について、サイデル教授は「人種による明らかな違いを調整して設定することが重要です。例えばシンガポールには中華系、マレー系、インド系という3種類の人種が住んでいて、インド人は腹部の脂肪が多いなどの違いがある」と話す。

 一方、デンマークのアーン・V・アストラップ・コペンハーゲン大教授は「デンマークでも肥満が増えている」としながらも、「肥満率が約18%で、30%を超える米国より低い水準を保っています」と説明。その理由について「デンマークでは野山を歩いたり、自転車の使用が伝統的に普及したりしているのがよい効果になっているのでしょう」と分析する。

 同国ではまた、具体的な肥満に関連した政策として、3年前から食用油などのトランス脂肪酸含有量は2%以下と罰則付きで規制している。

 「この脂肪酸は主に揚げ物用の油などに含まれていますが、体内で一種のホルモンのような作用をして、心臓病、糖尿病、高血圧を生じさせる原因になります。法律のおかげで、肥満に関連した病気の原因が一つ取り除かれたことになります」

 このほかにも原因とみられる要素は多い。アストラップ教授は「不眠症など不規則な眠りが原因になるという報告もあります。これらを解消するにはまず、国が総体的に環境を整え、そのあと国民が自分に適した正しい療法を選択をできるようにすることが最も受け入れられやすいと思います」と話す。

 「例えば、歩行者や自転車のための環境づくり。デンマークでは20年前から、自動車は都市の中心街では乗れないという法律を作っている。でもアジアの中には自動車が道路を占領して、自転車が自由に走れなくなっている国もあります」

 アジアの肥満対策は始まったばかりだが、多くの課題が提出された。肥満先進国の日本では、本格的な対策に乗り出している。



大正製薬
明治製菓
第一生命

    メタボリックシンドローム撲滅委員会とは メタボリックシンドローム撲滅運動キャンペーンの活動 メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛各社の取組み
最新情報
     ◆【参加申込受付中!】
     第29回肥満学会 市民公開講座
     「特定健診・保健指導はこわくない!
      -メタボリックシンドロームを予防・解消する生活習慣とは」

     日 時:2008年10月18日(土)15:00-17:00
     場 所: iichiko総合文化センター(大分)
     詳しくは>>
メタボリックシンドローム撲滅の意義
メタボリックシンドロームの治療
メタボリックシンドロームに関する諸学説
連載
委員会関連記事
松澤 佑次
(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
春日 雅人
(日本糖尿病学会理事長/国立国際医療センター研究所長)
松岡 博昭
(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学副学長)
北  徹
(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
齋藤 康
(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
渡邊 昌
(国立健康・栄養研究所理事長)
オフィシャルグッズ
情報交換
メールマガジン
メタボリックシンドローム・ネット
リンク集
100倶楽部
委員長
   松澤 佑次(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
委 員
   門脇  孝(日本糖尿病学会理事長/東京大学大学院教授)
   松岡 博昭(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学循環器内科)
   北   徹(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
   齋藤  康(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
   渡邊  昌(国立健康・栄養研究所理事長)
   中尾 一和(日本内分泌学会理事長/京都大学大学院医学研究科 内科学講座内分泌代謝内科教授)
   斉藤  勉(産経新聞社取締役編集・写真報道担当東京編集局長)
   大倉  明(産経新聞社総合企画室長)
   宮本 幸一(ニッポン放送常務取締役)
   中村 芳章(フジテレビジョン事業局長)
オブザーバー
   関  英一(厚生労働省健康局 生活習慣病対策室長)
   春日 雅人(国立国際医療センター研究所長)
   小林三世治(第一生命医長兼健康増進室長)
リーダー・総合監修
   宮崎 滋(東京逓信病院内科部長)
医学分野
   片山 茂裕(埼玉医科大学第4内科(内科学内分泌・糖尿病内科部門)教授)
   横出 正之(京都大学探索医療センター・探索医療臨床部長・教授)
   和田 高士(東京慈恵会医科大学新橋健診センター所長)
   柴 輝男(三井記念病院糖尿病代謝内科部長)
   中川 徹(日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長)
医療・保健指導分野
   津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長)
   野口 緑(尼崎市国保年金課健康支援推進担当課長補佐・保健師)
運動指導分野
   宮地 元彦(国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム運動ガイドライン プロジェクトリーダー)
   斉藤 満((社)日本ウオーキング協会事業局長)
   菅野 隆(健康創研代表・健康運動指導士)
食事指導分野
   鈴木志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科准教授)
   小野 真実(女子栄養大学食生態研究室講師)
   柴崎千絵里(東京女子医科大学病院栄養管理部)
メタボリックシンドローム撲滅委員会
産経新聞社
フジテレビジョン
ニッポン放送
フジサンケイ ビジネスアイ
厚生労働省
学会
日本肥満学会日本動脈硬化学会日本高血圧学会日本糖尿病学会日本循環器学会日本腎臓学会日本心臓病学会日本内分泌学会日本血栓止血学会日本歯科医学会日本歯周病学会日本抗加齢医学会日本CT検診学会日本人間ドック学会日本総合健診医学会日本食物繊維学会日本プライマリ・ケア学会
社団・財団・協会
日本医師会日本臨床内科医会日本歯科医師会日本栄養士会日本薬剤師会健康・体力づくり事業財団日本糖尿病財団日本心臓財団日本看護協会日本フィットネス産業協会日本製薬工業協会日本OTC医薬品協会日本生活習慣病予防協会日本健康運動指導士会全国保健センター連合会全国保健師長会日本ウオーキング協会日本健康スポーツ連盟健康保険組合連合会
協力団体
高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム
メディア
サンケイリビング新聞社扶桑社
協賛各社
第一生命保険相互会社 アステラス製薬株式会社 大塚製薬株式会社 オムロン・ヘルスケア株式会社
株式会社カイゲン 花王株式会社 科研製薬株式会社 キッセイ薬品工業株式会社
小林製薬株式会社 サノフィ・アベンティス株式会社 サンスター株式会社 塩野義製薬株式会社
第一三共株式会社 大正製薬株式会社 武田薬品工業株式会社 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
バイエル薬品株式会社 明治乳業株式会社
賛助企業
株式会社カーブスジャパン ・日本ケミファ株式会社