【第5部】アジアの肥満とメタボリックシンドローム
  (4) 「効果的指導で“行動変容”」
2007.02.27

 アジアの各国で欧米並みに肥満者が急増する中で、いち早く国レベルでの本格的な取り組みを始めた日本では、生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防治療をターゲットに、最新の医学研究の成果を導入し展開している。

 「まず体重を3キロ減量し、ウエストサイズを3センチ短縮する」。日本肥満学会が昨年10月に行った「神戸宣言2006」は、無理なく腹部の脂肪を減らすための指針でもあった。内臓脂肪の過剰な蓄積が原因で、高血糖、高血圧などの数値がわずかに高くても重複すれば動脈硬化を起こすメタボリックシンドローム。食事制限や運動量の増加に効果があることは容易に理解できても、症状が出ない段階から取り組みを長続きさせる「行動変容」を起こすのは困難だ。

 内臓脂肪の研究で知られる徳永勝人・高槻社会保険健康管理センター長は、全国の医療機関で人間ドックを利用した男女約800人のアンケート調査を担当した。その結果によると、内臓の周囲に脂肪が多く蓄積していた男性は「よく間食する」「アイスクリームが好き」、女性は「よく料理に砂糖を使う」などと回答し、男女とも「満足するまで食べる」の傾向だった。

 徳永センター長は「明確に統計差が示されており、総カロリーの高い食事が原因であることが裏付けられました」と説明する。この食習慣は長年の生活環境と結びついており、「とくに男性の場合、会食も仕事のうちなどの職場の環境があり、なかなか変えにくいでしょう」と話す。

 食事療法の基本は、1日の消費エネルギーより摂取エネルギーを少なくすることにある。日本肥満学会は、内臓脂肪蓄積による肥満症の摂取エネルギーの目安を1日1200キロ?1800キロカロリーとした。

 「カロリーを減らしながらも、タンパク質やビタミンなど必要な栄養素をきちんと食べることも不可欠」と指摘するのは武庫川女子大栄養クリニックの小西すず助教授。筋肉を作るタンパク質が不足すれば、基礎代謝によるエネルギー消費が低下し、脂肪がたまりやすくなる。このため、肉や魚などタンパク系食品、野菜、穀類、果物、油の5種類の食品を簡便に組み合わせられる「バランス型紙」と名づけた食事法を考案した。

 一方で、ジョギングなど呼吸を活発にする有酸素運動は、内臓脂肪を減らすことが明らかになってきた。この運動療法については昨年、厚生労働省の研究班が「健康づくりのための運動指針」をまとめた。栄養摂取基準の改定は5年ごとに行われているが、運動に関しては実に17年ぶりで、国の予防医学にかける意気込みがうかがえる。

 指針は体を動かすことの減量効果について、これまで発表された膨大な論文を整理したものだ。「メタボリックシンドロームや予備軍の人は1日あたり約1万歩、1週間のうち5回は30分の速歩を取り入れる」など具体的でわかりやすい。運動の効果は細切れに行っても足し算すれば同じ。身体活動の強さを表す「メッツ」に時間をかけた「エクササイズ」という単位をつくり、どれだけ行ったか計算しやすいようにも工夫した。

 指針をまとめた国立健康・栄養研究所の田畑泉・健康増進プログラムリーダーは「食事制限は不満足感が残るが、汗をかく運動は気持ちがいい。しかし行動変容にまでつなげるには、効果的な指導が大切。方法がわからない人には、背中を後押ししてあげる形がいい」と指摘している。



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