スリム社会への挑戦【第1部】
  (2) 「変わる企業健診」
2007.07.01

 ■データ蓄積 医学発展に貢献

 心電図、医師の問診、血液検査…。企業の定期健康診断でおきまりのブースに続いて最後に登場するのが、腹囲と内臓の周囲にたまる脂肪の断面積の測定だ。内臓脂肪の蓄積がさまざまな生活習慣病の発症につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者・予備群の選択を視野に入れての導入である。

 みずほ大阪健康開発センター(大阪市中央区)では、平成20年4月スタートの特定健診・特定保健指導を控え、体制を整えている。「健診の結果をもとに、ある程度の情報提供、動機付け支援を行っています。積極的支援ができる特別な健診の機会も設けています」とセンター所長の廣部一彦医師は説明する。

 特定健診・保健指導については企業の場合、医療保険者の健康保険組合に実施を義務付けられた。労働安全衛生法に基づく定期健診は従業員だけだが、特定健診は40歳以上の被扶養者にも広げられた。健診に要する人員の確保が困難などの理由から、多くの健保組合が専門の業者に外注する。経費の増大は免れない。しかし成果が上がれば、75歳以上の後期高齢者医療制度への拠出金が最大10%少なくてすむ。健診の実績が健保組合の運営にもかかわってくる。

 廣部医師らは大阪大学などが開発した内臓脂肪測定装置を使った健診で大きな成果を上げている。この装置は大掛かりなCT(コンピューター断層撮影)ではなく、ベルトのように腹部に巻き、体外から電流を流すだけで、側腹部の電圧の値から内臓脂肪の断面積の推定値が分かる。集団検診にはうってつけで、内臓脂肪の量はメタボリックシンドロームのリスクに直接影響するため、有効な情報となる。

 腹囲と内臓脂肪量を告げる健診時の情報提供を受けて、多くのメタボリックシンドローム該当者・予備群が改善に乗り出した。16年から18年まで3年連続で受診した約400人は腹囲が平均2センチ減少し、メタボリックシンドローム該当者・予備群は削減目標(25%)を上回り29%も減った。

 「積極的支援」など保健指導を行うかどうかの基準は、内科系8学会が17年にまとめた日本独自のメタボリックシンドロームの診断基準(腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上)を採用した。健診後、CTにより内臓脂肪の断面積を測定し、リスクが多くなる100平方センチ以上となる腹囲を厳密に算定したもので、皮下脂肪の多い女性は男性より大きくなる。

 廣部医師は「連続測定者の男性腹囲の平均値(17年)は約85センチ、内臓脂肪面積の平均値は約100平方センチであり、この結果からも男性の内臓脂肪面積100平方センチが腹囲の85センチに相当すると思われる。女性は皮下脂肪が多いため、内臓脂肪量100平方センチに相当する腹囲は85センチ以上となるのは当然で、ガイドラインの90センチというのは常識的にも妥当な値である」という。

 最近、国際糖尿病連合(IDF)が日本の腹囲の基準を中国など他のアジアの国と同じ、男性90センチ以上、女性80センチ以上とした。しかし、他の国はCTによる測定と腹囲の関連などの研究はほとんど行っていない。厚生労働省の矢島鉄也・生活習慣病対策室長は「今後も日本の学会の基準を使っていきたい」と話す。

 法律に基づく企業の定期健診は世界でもまれだ。蓄積される膨大なデータは、医学の発展に貢献することになるだろう。



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