スリム社会への挑戦【第1部】
  (5) 「持続プログラム」
2007.07.04

 「食後のデザートは2日に1回」「コーヒーには砂糖を入れないで」…。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と診断されたAさんは月に1回、電話による食生活の指導を受けた。6カ月後には血液検査のデータが改善していた。

 人材派遣会社、商社など出資の「グローバルヘルスケア」(東京・渋谷)が行っている保健指導サービスの一例だ。電話、郵便など双方向のやりとりが基本で、対象者の状況を確認しながら指導を進めていく。

 平成20年4月から始まる特定健康診査・特定保健指導では、医療保険者の人員不足などから、実際の健診や保健指導の多くが外部の企業に委託される。とくに保健指導をめぐっては、健康関連企業だけでなく、異業種が参入するケースが相次いでいる。日本政策投資銀行の調査では、健診・保健指導にかかわる市場は最大年間2800億円を超えるという。

 こうした事態に、保健指導で中心的な役割を果たす保健師や管理栄養士などの関係団体は「身につけた資格の重要性が増す。新たな分野で生かせるよう実力を磨かねば」と、研修や独自のプログラム開発に余念がない。

 今回のプログラムでは健診の結果、腹囲が基準値(男性85センチ以上、女性90センチ以上)を超え、高血圧などリスクがひとつなら「動機づけ支援」、2つ以上なら「積極的支援」になる。積極的支援は、医師か保健師、管理栄養士が、個別面接なら20分以上、グループ面接なら80分以上かけて指導し、行動目標と支援計画を作成してもらう。この計画に基づき電話などで3カ月以上も生活習慣の改善を支援し、6カ月後に結果を判定する。

 昨年12月に開かれた厚労省の検討会では「積極的支援」などが必要な人を平成20年度で約236万人と想定。その上で1日に保健師らが指導できる対象者を18人とし、必要な保健師らの人数は1341人と推計した。しかし、この場合、保健指導にかける時間を1人30分として、休みなく9時間行ってようやくできる。

 そこで日本栄養士会は、来春までに保健指導ができる管理栄養士を1万人育てる計画をたて、全国で研修を行っている。また、「栄養ケアステーション」と名付けた栄養相談所の開設を各都道府県の栄養士会で進めている。研修を受けた管理栄養士が登録し、企業の健康保険組合などから依頼があれば、管理栄養士を派遣する仕組みだ。

 中村丁次会長は「特定保健指導の実施は、管理栄養士にとって起業のチャンス。病気を診療所で医師にみてもらうように、食生活の相談が管理栄養士にできるような場所を地域に作りたい」と意気込む。

 一方、保健師が加入する日本看護協会は、独自の保健指導のプログラムを作成した。メタボリックシンドローム該当者でグループをつくり、3カ月に1度、それぞれの体験や失敗を語り合う。これが生活を見直す動機づけになるとの考えだ。同時に体重や血圧、血液などの検査データの変化をみながら、新たな生活習慣づくりができるよう支援を続ける。

 久常節子会長は「生活習慣を変えるには繰り返し支援を行う必要があり、より理想的な支援のプログラムができた」と自信たっぷりだ。

 特定健診・保健指導には、スリムで健康な社会を達成するためのこれまでにない周到なプログラムが組まれている。国民の意識改革にも影響を与えるとみられるが、ブームに終わらせない仕掛けも必要だろう。

(おわり)


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