【スリム社会への挑戦】第2部 (4) 保健指導マニュアル
2008.02.22

■地道なやりとりの実績生かせ

 「保健指導で『こうしなければいけない』と押しつけることはしません。自ら行動したくなるよう話しかけ、健康に興味をもってもらうことが第一です」。社会保険健康事業財団の保健師、直井久枝保健課長は、これまでの健康相談の経験から、生活習慣病の改善を促すには、自然な誘導が必要と説明した。

 4月から始まるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予防のための特定健診・保健指導の成否は、最後の詰めの保健指導にかかっている。該当者・予備群が納得し、すすんで食事・運動療法を始める「行動変容」が継続するかどうかがポイントで、非常に難しい。

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 平成2年に設立された同財団は、健康保険組合を持たない中小企業の従業員らが加入する政府管掌健康保険の被保険者(加入者約3500万人)らを対象に、年1回の生活習慣病予防健康診査の結果をもとに保健師が企業に出向いて健康相談を行ってきた。

 一括して健康相談できる大企業と違って、面談できるのは、1事業所で平均4、5人。プライバシーが保てる相談場所も限られ、工事現場でヘルメットをかぶり相談したこともある。

 相談者には脂質の異常が多いが、保健師は一方的に注意を喚起するのではなく、生活習慣で変えられるものを聞く。

 「夜食をラーメンからカップシチューに替えてみたら」など身近なことからアドバイスするのが秘訣(ひけつ)である、という。

 14年から始めた「健康増進コース」(1841人)は、ちょうど特定保健指導を先取りしたようなパターンだ。まず生活習慣を分析し、その人に合った運動や食生活の目標を設定する。面談後、数回の電話や手紙などで励ましや助言を半年から1年続けてきた。

 この結果、64%が生活習慣を改善、68%に健診データの改善がみられた。禁煙は64%、減量も75%が成功し、平均減量は3.5キロになるという目覚ましい結果が出た。おかげで設立当初は約4万9000件だった個別相談も18年度は61万件を超えた。

 直井保健課長は「健康に黄信号がともっているのを青信号に戻す手伝いをするのが保健師の役割。特定保健指導を機に、みなさんの健康にさらに貢献したい」と意欲を見せている。

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 兵庫県尼崎市国保年金課の保健師、野口緑課長補佐は、12年から16年にかけ職員らの保健指導を行い、その間、現職死亡ゼロだった。血圧や中性脂肪などのリスクを計算し倒れやすい人から指導を始める。「ビールの中にどれだけ砂糖が入っているか、それが内臓脂肪にどう変わっていくのか」など具体的なメカニズムを伝え、本人が自発的に生活習慣を変えるように導く。

 この指導法を市民にも広げ、18年に健康診断を行った3571人のうち、約3割の市民に保健指導を行ったところ半年後に8割の人が改善されたという。

 特定保健指導では、たとえば、健診で高血糖などリスクが2つ以上あれば「積極的支援」になり、個別面接20分以上、グループ面接なら80分以上かけて指導する。その後、電話や電子メールで3カ月以上支援し、6カ月後に判定する。

 きめ細かにマニュアル化されているだけに、一定の期間で指導される人数が限られることも予想される。

 中心的な役割をする保健師、管理栄養士は、職域が広がるとあって人気職業になった。しかし、大幅な人員不足は避けられない。実施を義務付けられた企業の健康保険組合の大半が外部の業者に委託する予定だが、これまでの地道な保健指導の実績を生かした取り組みを期待したい。(飽食社会取材班)

(2008/02/22)


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