有酸素運動で代謝改善(1/2)
2008.03.12

□大阪市立大学大学院医学研究科講師・絵本正憲氏に聞く

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、糖尿病の予備群ともとらえられる。内臓脂肪蓄積によって、体での糖の取り込み具合が悪くなるからだが、そうした病態の指標となるホルモン、つまり「インスリン抵抗性」の研究から、典型的な肥満を伴えば、体質的にはすでに糖尿病の人と同じレベルに陥っていることがわかってきた。その半面、ウオーキングなどの有酸素運動を行っただけでも、インスリンの働きが良くなり、インスリンによる糖の取り込み指標が50%も改善するなど、運動が大きく代謝改善に役立つことが明らかになっている。大阪市立大学付属病院生活習慣病・糖尿病センターにも勤務する同大学院医学研究科の絵本正憲講師は「運動効果は肥満対策だけではない。インスリンによる糖の取り込みという体の体質改善にもつながる」と指摘している。(大串英明)

 ■インスリンによる糖の取り込み 食事療法とあわせ50%も

--- 生活習慣病・糖尿病センターで患者さんを診ているそうですね

 これからは単に糖尿病だけでなく、生活習慣病というものが大切になるだろうと、昨年から付属病院内に設けています。基幹の大学病院ということで、糖尿病の患者さんが圧倒的に多いですが、中でもいろいろな病院で治療してもうまくいかない、比較的重症の患者さんが多いですね。

--- 「特定健診・保健指導」が始まるが、その取り組みとして

 こういうキャンペーンを含めて健診が始まりますと、いろいろなレベルの方々が引っかかってくると思われます。それこそ基準通りで本当にメタボリックシンドロームだなあという方、いわゆる糖尿病や高脂血症、高血圧などはっきりした病気の段階でなく、軽い症状の一歩手前の方々も、もちろん入ってくるでしょう。しかし、実はれっきとした糖尿病で血糖値も相当悪い人も多分、一定の割合で引っかかってくることが考えられます。健診の目的とは違うかもしれませんが、そういう本来、医療機関を受診すべき方々も拾い上げるというような意味合いも大きいと思いますし、逆にそういう方が単に保健指導で終わってしまうと危ないなという気がします。その辺の見極めをし、治療すべき人は治療するのがいいと思います。

 もう一つ、薬物療法が必要でない、生活習慣の改善でフォローできる方々に対しても積極的に受け入れ、例えば看護師、管理栄養士などのスタッフが長年、糖尿病食で培ったカロリー制限など食事療法のノウハウを生かして指導していきたい。

--- 糖尿病のほとんどの患者さんは症状がない

 よく見られるケースとして、職場健診の尿糖検査などでは毎年引っかかっていたが、ずっと放置していて、来診されたときには、すでに網膜症などの合併症を発症していたりする。それは本来治療すべき期間を10年近くロスしているわけです。また、ある程度血糖コントロールがされているので治ったと思ってしまい、「治療中断」を繰り返して悪化する。そういう病歴の方も多く結局、自覚症状もないまま日常の生活に困らないことが問題なのですね。

--- 動脈硬化の予防対策では

 糖尿病や生活習慣病をターゲットにしている私たちとしては、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などを起こさないよう、リスク要因の最たる血圧・コレステロール・血糖の3つを治療目標に懸命に治療に当たっています。血圧とコレステロールに関しては、最近食事療法をベースにしながら薬物療法も非常に進歩して、コントロールしやすくなっています。糖尿病も含めた入院患者さんのデータでもコレステロールの平均値が数年前までは220-240mg/dlぐらいが多かったのですが、最近は、大体200を切るケースが多いのです。

 ところが、コントロールが難しいのは血糖値と体重管理なのです。中でも肥満者の管理が難しく、ガイドラインの目標値にはとても及びません。私たちの動脈硬化検査外来を受診した約700人の患者さんの治療前のヘモグロビンA1cは治療目標の6.5%未満が約30%、6.5-8.0%の人が50%もおられます。肥満、体重管理は、そのために入院しても入院中は減量効果があるのですが、退院すると継続的な運動をしなくなり、リバウンドが起きたりして目標に達しないことが多いのです。

--- 減量と血糖値の関係は

 減量すれば、もちろん血糖値も良くなってきます。血圧も少し下がるし、中性脂肪は明らかに下がります。結局、内臓脂肪蓄積がもとになって血糖値異常、血圧高値、あるいは中性脂肪高値、低HDL(善玉コレステロール)血症を招くことになります。肥満がメタボリックシンドロームの基礎病態であることは間違いないでしょう。40、50代の方の肥満で、いわゆる内臓脂肪型のメタボリックシンドロームに当てはまりそうな方は、血圧が最初の兆候として上がってくることが多いのですね。血糖に関しては、普通、空腹時血糖値が上がってくる前に、まず食後血糖値が上がってくると考えられています。

--- 「インスリン抵抗性」に関して

 私たちはインスリン抵抗性というものをキーワードにずっと臨床研究を続けてきましたが、実はインスリン抵抗性というのは、メタボリックシンドロームの基本病態の一つでもあるのです。しかし、古くから知られているわりには、通常の臨床でとらえることが難しいのです。例えば、肝機能ならGOT検査の数値で、血糖コントロールの状態ならヘモグロビンA1cの判定値を見ればわかりますが、インスリン抵抗性となると、そういう判定手段がなく、結局、正確には人の体の筋肉や脂肪組織がどの程度ブドウ糖を取り込みやすいか見るほかないわけです。

--- どういう方法で

 私たちは、グルコースクランプと呼ばれる「人工膵臓(すいぞう)」というものを使い、体の中で安静時にどれくらいブドウ糖が取り込まれやすいか、検査を続けてきたのです。その装置は、片方から少しずつインスリンを点滴し血糖値はどんどん下がっていくので、もう片方からはブドウ糖を点滴して、正常な血糖値を保つのに必要なブドウ糖量を探ります。このブドウ糖の取り込み率は、主に体全体の筋肉と脂肪で消費される量に等しくなり、インスリン抵抗性の指標となります。

 十数年、延べ400人の患者さんの協力を得てインスリンの取り込み具合を調べた結果、いわゆる2型糖尿病の方は、健康な人と比べ、インスリンの取り込み具合が半分でした。血糖値が正常な人は、大体平均値9mg/kg/分だったのに対し、糖尿病の人は、およそ4mg/kg/分と少なかった。一方、明らかな糖尿病ではないが、正常との境界域にあるIGT(耐糖能異常)で、なおかつBMI(体格指数)がおよそ30の肥満の方々は、2型糖尿病の人に劣らず、糖の取り込みが少ないことがわかりました。肥満があって「境界型」の人は、実はもう糖尿病と同じくらい悪くなっています。ですから、メタボリックシンドロームの典型的な肥満を伴っていれば、インスリン抵抗性の面からみれば、実は体質的には明らかに糖尿病の人と同じようなレベルに落ちていることがわかってきたのです。

(2008/03/12)


大正製薬
明治製菓
第一生命

    メタボリックシンドローム撲滅委員会とは メタボリックシンドローム撲滅運動キャンペーンの活動 メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛各社の取組み
最新情報
     ◆【参加申込受付中!】
     第29回肥満学会 市民公開講座
     「特定健診・保健指導はこわくない!
      -メタボリックシンドロームを予防・解消する生活習慣とは」

     日 時:2008年10月18日(土)15:00-17:00
     場 所: iichiko総合文化センター(大分)
     詳しくは>>
メタボリックシンドローム撲滅の意義
メタボリックシンドロームの治療
メタボリックシンドロームに関する諸学説
連載
委員会関連記事
松澤 佑次
(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
春日 雅人
(日本糖尿病学会理事長/国立国際医療センター研究所長)
松岡 博昭
(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学副学長)
北  徹
(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
齋藤 康
(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
渡邊 昌
(国立健康・栄養研究所理事長)
オフィシャルグッズ
情報交換
メールマガジン
メタボリックシンドローム・ネット
リンク集
100倶楽部
委員長
   松澤 佑次(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
委 員
   門脇  孝(日本糖尿病学会理事長/東京大学大学院教授)
   松岡 博昭(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学循環器内科)
   北   徹(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
   齋藤  康(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
   渡邊  昌(国立健康・栄養研究所理事長)
   中尾 一和(日本内分泌学会理事長/京都大学大学院医学研究科 内科学講座内分泌代謝内科教授)
   斉藤  勉(産経新聞社取締役編集・写真報道担当東京編集局長)
   大倉  明(産経新聞社総合企画室長)
   宮本 幸一(ニッポン放送常務取締役)
   中村 芳章(フジテレビジョン事業局長)
オブザーバー
   関  英一(厚生労働省健康局 生活習慣病対策室長)
   春日 雅人(国立国際医療センター研究所長)
   小林三世治(第一生命医長兼健康増進室長)
リーダー・総合監修
   宮崎 滋(東京逓信病院内科部長)
医学分野
   片山 茂裕(埼玉医科大学第4内科(内科学内分泌・糖尿病内科部門)教授)
   横出 正之(京都大学探索医療センター・探索医療臨床部長・教授)
   和田 高士(東京慈恵会医科大学新橋健診センター所長)
   柴 輝男(三井記念病院糖尿病代謝内科部長)
   中川 徹(日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長)
医療・保健指導分野
   津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長)
   野口 緑(尼崎市国保年金課健康支援推進担当課長補佐・保健師)
運動指導分野
   宮地 元彦(国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム運動ガイドライン プロジェクトリーダー)
   斉藤 満((社)日本ウオーキング協会事業局長)
   菅野 隆(健康創研代表・健康運動指導士)
食事指導分野
   鈴木志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科准教授)
   小野 真実(女子栄養大学食生態研究室講師)
   柴崎千絵里(東京女子医科大学病院栄養管理部)
メタボリックシンドローム撲滅委員会
産経新聞社
フジテレビジョン
ニッポン放送
フジサンケイ ビジネスアイ
厚生労働省
学会
日本肥満学会日本動脈硬化学会日本高血圧学会日本糖尿病学会日本循環器学会日本腎臓学会日本心臓病学会日本内分泌学会日本血栓止血学会日本歯科医学会日本歯周病学会日本抗加齢医学会日本CT検診学会日本人間ドック学会日本総合健診医学会日本食物繊維学会日本プライマリ・ケア学会
社団・財団・協会
日本医師会日本臨床内科医会日本歯科医師会日本栄養士会日本薬剤師会健康・体力づくり事業財団日本糖尿病財団日本心臓財団日本看護協会日本フィットネス産業協会日本製薬工業協会日本OTC医薬品協会日本生活習慣病予防協会日本健康運動指導士会全国保健センター連合会全国保健師長会日本ウオーキング協会日本健康スポーツ連盟健康保険組合連合会
協力団体
高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム
メディア
サンケイリビング新聞社扶桑社
協賛各社
第一生命保険相互会社 アステラス製薬株式会社 大塚製薬株式会社 オムロン・ヘルスケア株式会社
株式会社カイゲン 花王株式会社 科研製薬株式会社 キッセイ薬品工業株式会社
小林製薬株式会社 サノフィ・アベンティス株式会社 サンスター株式会社 塩野義製薬株式会社
第一三共株式会社 大正製薬株式会社 武田薬品工業株式会社 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
バイエル薬品株式会社 明治乳業株式会社
賛助企業
株式会社カーブスジャパン ・日本ケミファ株式会社