■職場や家庭で簡単に! いすに座って前屈/立って電話
---では、運動不足の弊害は
健康な人をベッドに約3週間、寝かせっぱなしにさせ、ほぼ動かない状態にしていると、筋肉はおよそ15-20%減ってしまい、戻すのに、休んだ日数の5倍かかったという実験結果もあります。運動不足は、血液の量を減らし、筋肉や骨をやせ衰えさせるばかりか、ことごとく体を弱くさせます。運動にも「3大栄養素」みたいな、確たる運動の仕方があるのです。
---というと
第1に、ウオーキングに象徴される、エアロビクス的な有酸素運動。これは主に脂肪を燃やしてくれます。第2には、俗にいう「筋トレ」、筋肉の代謝を高めて脂肪を燃えやすくします。第3に筋肉と腱を伸ばす体操の「ストレッチング」。ウオーキングを続けると背面の筋肉が緊張して硬くなり、血流が悪くなって脂肪が燃えにくくなるので、筋トレやストレッチを併せて行った方が、より効果が上がるわけです。血液の流れを良くすることが大切で、柔軟体操でもあるストレッチは、体温の上昇や相当エネルギーを使うので脂肪燃焼には効果的。ひざの筋肉の伸び縮みが基本型の「スクワット」は、関節が傷つくことがあるので要注意。100年前にドイツで提唱された「アイソメトリック」という運動があります。関節を動かさずに足と足を組み合わせ、ただじっと、およそ7秒間押し合うだけですが、足の筋肉が強くなり、代謝が高まることがわかって、見直されているのです。筋トレといっても、会社で多少の時間があれば、ちょっとひざを曲げて電話をかけるだけでも十分筋トレになり、いすに座りながら前に体を倒すだけで、背中から腰の筋肉を伸びやかにするストレッチになるわけです。この3つを組み合わせるのが理想的で、メタボリック対策の一助にもなると思います。
---食事療法だけだと
食事、運動療法どちらも体重を減らすことはできますが、中身がまったく違ってくるのです。食事療法だけだと、主に筋肉や骨、血液など、要は生きるために必要なものが減ってきて、運動と食事療法を兼ね合わせた場合には、主に脂肪が減ってきます。体重だけ見ていると、「減った」となるわけですが、中身が問題なのです。本当は、体脂肪率がきちんと量れるといいのですが、機器によって誤差もあり、同じ機器で量り続ける必要があります。水分の抜けない前、お風呂に入る前に量っておくことが肝心ですね。
---人間は、エネルギー、栄養素も必要ですね
最近の研究で一般的に女性の場合の体脂肪率は、最低17%、最高は30%ぐらい。男性は5%から、できれば20%以内にとどめるのが妥当とわかってきました。ある幅を持たせていて、こういう数値を超えたやせ過ぎ、太り過ぎは、体に決して良くありません。特にやせ過ぎの女性は、生理不順、妊娠経過、ホルモンの出が悪くなり、骨がもろくなります。女性は体脂肪率の平均も男性より多くなっていますが、これは多分に妊娠と関係があり、体脂肪率で求めた脂肪の量をエネルギー換算すると、胎児が十月十日生きるために必要なエネルギー量にほぼ匹敵するわけなのです。女性の体に体脂肪が多いというのは、子供を育てるのに必要だからと考えざるを得ませんね。それが、今度、閉経を迎えると、男性型肥満になりますから内臓肥満を注意しないといけません。ある意味で、女性が(男性のメタボリックシンドローム診断基準値腹囲径85センチに対し)90センチというのも、案外、実態に即しているのかもしれません。
---今年から、全国的な「特定健診・保健指導」も始まる
住民健診の通知も一斉にきているようですが、別に驚くことではありません。自己管理、つまり自分の体は、自分で管理するのが当然だと思うからです。ある調査では、1日およそ8000歩、歩いている方とそれより少ない方との1年間当たりの医療費を計算したところ、その差額は、20万-30万円の単位だったことも明らかになっています。自己管理それ自体、経済性を持ってくるのです。
「コックピット症候群」とも言われるように、動かずにすべて手近なことで済ませようとすると、メタボリックシンドロームに陥ります。ですから、自分のやれる手法で、まずは3000歩のウオーキングでも結構ですから、無理をせずに健康づくりの運動を進めてほしいですね。
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【プロフィル】湯浅景元
ゆあさ・かげもと 中京大学体育学部卒業。東京教育大学大学院修士課程、東京医科大学で学ぶ。医学博士。現在、中京大学大学院研究科教授としてコーチング論・スポーツ環境論を担当。豪州・グリフィス大学高等研究員として留学。健康づくりのための運動方法、スポーツ競技力向上の普及に努めている。

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