----糖尿病は、血管病でもある
糖尿病は、別の見方をすれば、血管の病気で、全身の血管が悪くなります。糖尿病があると、動脈硬化が非常に進みやすくなることは、幾多のエビデンス(科学的証拠)で明らかになっています。進展を止めるには、コレステロールや血圧なども、ともに下げていこうというのが今の考え方です。合併症の中でも「腎不全」は依然増え続けており、腎臓は血管の集まりですから、最終的には、「透析」を受けることになります。毎年、1万3500人の患者さんがうまれており、その医療費も莫大(ばくだい)なものになっています。
----遺伝との関係は
最近の研究でも、ライフスタイルの影響がものすごく大きく、遺伝だけで決まる病気でないことが明らかになってきました。だから、運動や食事療法で是正も可能なのです。
----内臓脂肪に関連して、新たな食欲抑制の原理も発見されていますね
東北大学医学部創生応用医学研究センターの片桐秀樹教授との共同研究で、マウス実験ではありますが、内臓脂肪の代謝を変えてやると、それが神経を介して脳に伝わり、食欲にブレーキをかける情報をキャッチして「正しく食べる」ようになるということを発見したのです。私たちは、これを臓器(肝臓、脂肪組織、筋肉、脳など)間の代謝情報のネットワークと呼んでいます。例えば、肝臓の代謝は肝臓だけで勝手にやっているのではなく、脂肪組織や筋肉ともある協調性を持って連動しています。肝臓が脂肪をため込むと脳がキャッチして、脂肪組織に「肝臓で蓄えた分、脂肪組織で減らして調節しなさい」という情報を出すことがわかったのです。
----内臓脂肪でもそういう指令を出している
そうです。従来、内臓脂肪からのさまざまなホルモンの分泌が脳に把握されていることはわかっていましたが、それ以外にも、自律神経を介しても内臓脂肪から脳に情報が送られ、指示を受けていたのです。これが新たな発見でして、「内臓脂肪から食欲のブレーキが出る」というような表現にもなったのです。いわば臓器間でお互い連絡しながら、うまく代謝のバランスが取れるようなシステムになっているのです。そのバランスの崩れが今のメタボリックシンドロームそのものなのです。この調節の情報システムを逆にうまく使えば肥満や糖尿病の新たな治療法となる可能性があるのですね。
----マウス実験というと
ある遺伝子をマウスの内臓脂肪に注入しますと、それまで高脂肪食をガツガツ食べていたマウスが、実に見事に普通に戻って食べるようになります。こうしたマウス実験の成果を人間の過食問題の解決にどこまで持っていけるかが課題です。
----とめどない食欲も
こんなに太っているのに、なぜまだ食べ続けるのか不思議に思える患者さんもいます。いくら口をすっぱくして言っても、食事制限を守れない人がいっぱいいます。食べるから悪いのだと、一言で済まされない何かがあるのです。どうして必要以上に食べるのか、食欲はどう作られるのか。肥満の患者さんの食欲を責めるだけではなく、科学的に解明し、人体内の抑制の情報システムを使って治してやれば普通に食べられるようになるのではないかと思うのですね。
----それにしても、糖尿病は一向に減らない
私は、「糖尿病の本態」は、「インスリンを出す力が減少すること」と解釈していますが、それは個人で年々、悪くなっていくようです。従って次第により強い薬へと変わっていき、最後にはインスリン注射をして血糖を下げることになることが多いのです。病気の本態はゆっくり進行していると考えざるを得えません。より重症化していくのを、今の治療法では止めようがないのです。
----なぜ、年々、重症化するのか
根本的には、インスリンを分泌する「膵β細胞」の細胞一つ一つがゆっくり死んでいっているのではないかと考えているのです。細胞は「アポトーシス」といって、役割が終われば自死していきますが、糖尿病の重症化現象も、これに近いのではないでしょうか。これを食い止めたり、細胞を増やして補うことが可能なのかどうか。これは私の大きな研究テーマです。もう一つ、食べ過ぎを止める方法。これらの新薬開発や研究が世界中で競われているのですね。
----現況では、内臓脂肪を減らすのが、一番いい方法だと
その通り、地道に内臓脂肪を減らす運動や食べ過ぎに注意する以外にないのです。今回の「特定健診・保健指導」とも連動して、是正可能なうちに見つけ出すことを大いに期待しているのです。
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【プロフィル】岡 芳知
おか・よしとも 東京大学医学部卒業。米・マサチューセッツ大学医学部留学、東京大学医学部講師、山口大学医学部第3内科学教授を経て、平成13年、東北大学大学院医学系研究科分子代謝病態学教授。専門は内科学、代謝内分泌学。日本糖尿病学会理事、日本内科学会評議員など。

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