【メタボリックシンドローム撲滅運動】(2/3)
     ■第4回撲滅委員会
2008.04.02

 メタボリックシンドローム撲滅委員会は2月29日、東京のホテルで開かれた。委員長の松澤佑次・住友病院院長、委員の北徹・京都大学副学長、春日雅人・神戸大学医学部教授、中尾一和・京都大学大学院教授、松岡博昭・獨協医科大学副学長、渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長とオブザーバーの関英一・厚生労働省健康局生活習慣病対策室長が参加。特定健診・保健指導の課題を中心に話し合った。

                   ◇

 ■国民の正しい理解へ体制整備 継続できる指導が大切

 ■糖尿病、高血圧、高脂血症予防の“砦”に

松澤氏 4月から新しい試みとして特定健診・特定保健指導という非常に壮大な予防医学がスタートします。メタボリックシンドローム撲滅委員会はそのような政策が決まる以前から、国民への生活習慣病の最も効率のいい対策としてのメタボリックシンドロームを想定した予防を啓発する目的で行ってきたことが、今まさに一つの制度としてスタートするということです。われわれは、最も効率のよい予防医学として一つの基準を決めたと思っています。メタボを診断する目的が、がんの診断のようなものではなくて、すでに生活習慣病を重ね持っている人の中で、医療費がかからない生活習慣の改善とセルフコントロールで治せる群を選んで、薬を使う医療と分けて考えようという政策が今回スタートするわけです。

 ただ、朗報は、言葉だけでなく内容についても国民の認識が非常に上がり、すでに効果を実感している人も多いということです。予防医学は、トップダウンで言われてもなかなか実現しないことが多いからです。

----健診事業を進めるうえでの課題は

関 氏 特定健診・特定保健指導を立ち上げて円滑にスタートするには、短期的課題と中長期的課題があります。短期的には、実施主体となる医療保険者らが取り組み体制を整備するとともに、国民の方々の正しい理解を深めていくことでしょう。立ち上げ当初のさまざまな問題については、一つ一つ丁寧に克服していけるよう国や都道府県でも支援していきたい。中長期的には、個々人が自らのリスクを継続して自発的に解消していく努力への支援であり、そのための情報提供や運動の場などの環境作りです。また、実施団体、都道府県、医学界など関係者相互の円滑な連携も大切です。

----各学会の専門領域からみて、期待することは

北 氏 動脈硬化学会で非常に注目しているのは、一つが「沖縄26ショック」で、沖縄の男性の方々の平均余命がいきなり26番目に下がり、昨年は27番目に下がった。その背景が重要で、おそらく第二次大戦後の約60年の間、欧米の食文化が急速に導入されていること。さらに車社会であること。まさに食生活と運動不足ということです。

 また、フィンランドは、もともと非常に動物性の脂、タンパクをたくさんとる国民で、心筋梗塞(こうそく)患者が非常に多いけれども、第二次大戦中、その直後からかなり減った、ということが疫学的にわかっています。そういう観点から、この問題を大きくとらえ、長いスパンで取り組まなければいけないと思っています。生活習慣の改善により複数の危険因子がどれだけよくなるかということについて、福岡大学体育学部の田中宏暁教授を中心に行った研究があります。食事療法と運動療法、その併用と分けて調べたもので、食事療法がもっとも効果があり、運動療法や併用は必ずしもよくならない場合があるとの結果が出ました。運動療法はやはり多めに食べてしまうことがある。重要な点は、本人が継続するような保健指導が大切であるということです。

春日氏 今までの健康診断は、検査された人に対して、ただ検査値を返すだけでしたが、今回からはそれに指導がつくということで、画期的だと思っています。糖尿病学会としては、一つは、保健師、管理栄養士らコメディカルの方もかなり学会に加入していて、すでに今までの年次学術集会などで今回の問題を取り上げるなど円滑に実施されるよう努力してきました。もう一つは、例えば糖尿病や高血圧などすでに病気になっていることがわかった人には、いかに正しい治療をしてもらうかというのは、非常に大きな問題だと思います。その意味で日本糖尿病学会は、日本医師会と糖尿病協会、日本歯科医師会などで日本糖尿病対策推進会議をつくっています。そこでの活動目標が、医療機関を受診されても、自覚症状がないので治療を中断する人を少なくしようというものです。糖尿病と診断された方は、早期に確実に治療して、合併症に発展するのを防ぐことに尽力したいと思います。

松岡氏 日本の高血圧人口は三千数百万人で非常に多く、メタボリックシンドロームの中で高血圧が占める要因は一番高い。日本高血圧学会では、家で測る血圧は正常でも病院では高血圧を示す「白衣高血圧」などにも配慮して指導してはどうか、と提言しています。また、一般的には140/90mmHg以上が高血圧ですので、それ以上だと受診勧奨の対象になりますが、それ以外に全くリスクがない人は、生活習慣の修正にまず取り組んでいただく。

 それでも高血圧が続けば、軽症であっても、薬物治療を開始するというような提言をさせていただいています。

 一番大事なのは、高血圧、あるいは糖尿病、高脂血症は、ほとんど症状がなく脳卒中や心筋梗塞を起こすということです。だから、いかに一般の方々がそういう症状のない病気について深い関心を持つかということが重要です。2年前から高血圧協会を立ち上げて一般の方々への啓発活動を行っています。

中尾氏 多種類のホルモンが、肥満症、糖尿病、高血圧などの成因に関連しており、ホルモンの研究は、急速に焦点をメタボリックシンドロームや生活習慣病の領域に絞り込んできています。ホルモン研究から新しい診断法が開発され、新しい治療法の開発ににつながる糸口になる成果が得られますので、今後、日本内分泌学会としては、そんな成果を出していきたいと考えています。特定健診との関連ですが、日本の肥満度については、グローバルな比較では低い段階であり、この低い肥満度で肥満の重要性が認識されたことは注目すべき点であると思います。すべての病気には、早期と進行した段階があるわけですが、肥満度が低い軽症で早期の段階にこの対策が行われるということの意義は極めて大きく、軽症で早期の方がより予防効果が大きいことは当然予想されるところです。

渡邊氏 国立健康・栄養研究所は、国の「新健康フロンティア戦略」で糖尿病の1次予防の司令塔と位置づけられ、日本を医療費破滅から救うためには糖尿病患者を減らす必要があると、環境づくりも含めて日々考えています。実は私自身、メタボリックシンドロームから糖尿病を発症して15年になりますが、「1に運動、2に食事」でコントロールして、これで国民全体がどこまでいけるだろうかというのが、非常に大きな関心と課題と思っています。幸い、日本栄養士会、病態栄養学会など関連学会の方々と一緒に、どのように食事療法や運動療法を取り入れていけばいいかということを集中して考えています。

 本当のところ、国民一人一人のQOL(生活の質)をいかに高く保てるかということだと思います。現実に私の場合、15年間、糖尿病のインスリン療法をずっとやっていると、医療費だけで大体2000万円から3000万円かかっていたはずです。健康保険を使って3分の1自己負担でも、数百万から1000万ぐらい負担しないといけなかったかもしれないということで、まして動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞につながると、QOLはずたずたになってきます。

 たばこが健康に悪いというのは、とにかく医療関係者の間では常識になってきました。幸い社会環境も、喫煙をコントロールすべきだという方向に動いています。メタボリックシンドロームは、成人では随分、何とかすべきだという認知度が高まってきましたが、小児肥満の問題や食育の問題を取り上げていけばよい、と考えています。

(2008/04/02)


大正製薬
明治製菓
第一生命

    メタボリックシンドローム撲滅委員会とは メタボリックシンドローム撲滅運動キャンペーンの活動 メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛各社の取組み
最新情報
     ◆【参加申込受付中!】
     第29回肥満学会 市民公開講座
     「特定健診・保健指導はこわくない!
      -メタボリックシンドロームを予防・解消する生活習慣とは」

     日 時:2008年10月18日(土)15:00-17:00
     場 所: iichiko総合文化センター(大分)
     詳しくは>>
メタボリックシンドローム撲滅の意義
メタボリックシンドロームの治療
メタボリックシンドロームに関する諸学説
連載
委員会関連記事
松澤 佑次
(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
春日 雅人
(日本糖尿病学会理事長/国立国際医療センター研究所長)
松岡 博昭
(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学副学長)
北  徹
(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
齋藤 康
(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
渡邊 昌
(国立健康・栄養研究所理事長)
オフィシャルグッズ
情報交換
メールマガジン
メタボリックシンドローム・ネット
リンク集
100倶楽部
委員長
   松澤 佑次(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
委 員
   門脇  孝(日本糖尿病学会理事長/東京大学大学院教授)
   松岡 博昭(日本高血圧学会理事長/獨協医科大学循環器内科)
   北   徹(日本動脈硬化学会理事長/京都大学理事・副学長)
   齋藤  康(日本肥満学会副理事長/日本動脈硬化学会副理事長/千葉大学学長)
   渡邊  昌(国立健康・栄養研究所理事長)
   中尾 一和(日本内分泌学会理事長/京都大学大学院医学研究科 内科学講座内分泌代謝内科教授)
   斉藤  勉(産経新聞社取締役編集・写真報道担当東京編集局長)
   大倉  明(産経新聞社総合企画室長)
   宮本 幸一(ニッポン放送常務取締役)
   中村 芳章(フジテレビジョン事業局長)
オブザーバー
   関  英一(厚生労働省健康局 生活習慣病対策室長)
   春日 雅人(国立国際医療センター研究所長)
   小林三世治(第一生命医長兼健康増進室長)
リーダー・総合監修
   宮崎 滋(東京逓信病院内科部長)
医学分野
   片山 茂裕(埼玉医科大学第4内科(内科学内分泌・糖尿病内科部門)教授)
   横出 正之(京都大学探索医療センター・探索医療臨床部長・教授)
   和田 高士(東京慈恵会医科大学新橋健診センター所長)
   柴 輝男(三井記念病院糖尿病代謝内科部長)
   中川 徹(日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長)
医療・保健指導分野
   津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長)
   野口 緑(尼崎市国保年金課健康支援推進担当課長補佐・保健師)
運動指導分野
   宮地 元彦(国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム運動ガイドライン プロジェクトリーダー)
   斉藤 満((社)日本ウオーキング協会事業局長)
   菅野 隆(健康創研代表・健康運動指導士)
食事指導分野
   鈴木志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科准教授)
   小野 真実(女子栄養大学食生態研究室講師)
   柴崎千絵里(東京女子医科大学病院栄養管理部)
メタボリックシンドローム撲滅委員会
産経新聞社
フジテレビジョン
ニッポン放送
フジサンケイ ビジネスアイ
厚生労働省
学会
日本肥満学会日本動脈硬化学会日本高血圧学会日本糖尿病学会日本循環器学会日本腎臓学会日本心臓病学会日本内分泌学会日本血栓止血学会日本歯科医学会日本歯周病学会日本抗加齢医学会日本CT検診学会日本人間ドック学会日本総合健診医学会日本食物繊維学会日本プライマリ・ケア学会
社団・財団・協会
日本医師会日本臨床内科医会日本歯科医師会日本栄養士会日本薬剤師会健康・体力づくり事業財団日本糖尿病財団日本心臓財団日本看護協会日本フィットネス産業協会日本製薬工業協会日本OTC医薬品協会日本生活習慣病予防協会日本健康運動指導士会全国保健センター連合会全国保健師長会日本ウオーキング協会日本健康スポーツ連盟健康保険組合連合会
協力団体
高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム
メディア
サンケイリビング新聞社扶桑社
協賛各社
第一生命保険相互会社 アステラス製薬株式会社 大塚製薬株式会社 オムロン・ヘルスケア株式会社
株式会社カイゲン 花王株式会社 科研製薬株式会社 キッセイ薬品工業株式会社
小林製薬株式会社 サノフィ・アベンティス株式会社 サンスター株式会社 塩野義製薬株式会社
第一三共株式会社 大正製薬株式会社 武田薬品工業株式会社 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
バイエル薬品株式会社 明治乳業株式会社
賛助企業
株式会社カーブスジャパン ・日本ケミファ株式会社