降圧薬、世界40カ国で史上最大の臨床試験 (2/2)
2008.04.29

■日本で多く使用、正しさ認められ安堵感

--- ARB全般に、こうした試験結果が当てはまるのかどうか

 ただ、注意しなければいけないのは、大規模臨床試験の結果だけでARBやACE阻害薬がすべてそういう効果があると拡大解釈せずに、それに使われた薬固有のものとしてまず理解されるべきであろうと考えます。テルミサルタンは、最近、糖や脂質代謝をつかさどる遺伝子の発現をコントロールするレセプター(受容体)「PPARγ」を刺激する働きもあることがわかり、心筋梗塞などの抑制作用にも独特の作用を及ぼしているとも考えられるのです。

--- いわゆる臨床試験全般の中で、ONTARGET試験をどう位置づけるか

 循環器病の権威、米デューク大学のザウ学長が提唱している心血管疾患の連鎖を示す概念図があります。心血管疾患の始まりは高血圧や糖尿病、最近ではメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)も加えられますが、動脈硬化や心肥大へと進み、心筋梗塞・脳卒中に至ります。生き永らえた場合でも、脳や心臓を修復しようとして逆に状態を悪化させてしまうねじれ現象(リモデリング)も起き、心不全・脳卒中などの再発を来し、脳障害・認知症などを経て最終的には患者の命を奪ってしまうという連鎖です。こうした連鎖のすべてにわたって、悪玉ホルモンのレニン・アンジオテンシン系が関与していることがわかっており、この連鎖を断つにも、レニン・アンジオテンシン系の阻害作用による効果が立証されつつあるわけです。ARBにとっては、今回の臨床試験は、非常に大きな意味があったとも受け取れます。わが国の高血圧の日常診療にとっても、正しさが是認される形となり、安堵感が広がっていると思われるのです。

--- メタボリックシンドロームについて

 恐らくホルモンのレニン・アンジオテンシン系も原始の時代、食塩をため込むなど命を永らえる役割を負っていたと思われますが、人類の進化とともに血圧を上げるなどの逆作用に転化してきて、飽食の現代、一層きしみが生じてメタボリックシンドロームや生活習慣病が増えていると考えられます。一方、新しく開発された優れた薬を使うことによって病気が回復し始めました。さまざまな薬の効果を大規模臨床試験で確かめることは、発症予防、病気の重症化を防ぐ意味でも大事なことなのですね。

                  ◇

【プロフィル】檜垣實男氏

 ひがき・じつお 大阪大学医学部卒業。米オハイオ州クリーブランドクリニック研究員、大阪大学加齢医学講座助手などを経て、平成12年、愛媛大学医学部内科学第2講座教授。現在、同大学大学院病態情報内科学教授、同付属病院副院長。専門は、高血圧・循環器病学。日本内科学会、日本循環器学会評議員など。



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