■「階段ダイエット」推奨
--- 医療費も減った
私どもの調査(兵庫県稲美町)では、こうしたダイエット教室者のレセプトなどの分析を行って2年間追跡調査したところ、リスクを抱えた人たちに介入すると、医療費が全体で3割も減ってきている事実が明らかになったのです。ダイエット教室の費用と、医療費とを差し引いたら元は取りもどせる。企業の健康保険組合も、そういう長期的なベネフィットとコストを考えて、特定健診・保健指導に力を入れたらいいのかなと思います。
--- なかなか改善しようとしない人も
今回の特定健診・保健指導は、まず初めに、厚生労働省の定めた〈22項目〉の「質問票」を参考に、医師・保健師・管理栄養士さんたちがチェックすることになります。中には、〈21番目〉「運動や食生活を改善しようと思いますか」の問いに「改善するつもりはない」とズバリ答える人もいます。保健指導そのものも拒否する人もいて、保健師さんたちは大変やりにくいことになりますが、そういう人の対処法について、リーダー的な立場にある担当者は、こんな言い方をしています。「医療者は、よかれと思って、何とか最善の策に向かわせようとするから反発されるのです。対象者が自ら決めたことは、こちらのゴールとかけ離れていても、やり遂げられることが多いのです。従って、『行動変容』というのは、本人の中にある解決法(気付き)を引き出す作業といってもいいでしょう」。行動変容を促すのは、確かに難しい。それが一番の難問という人もいます。しかし、できないことはありません。じっくり相手の性格を見て、言葉のかけ方やペースに合わせて気付きを促していくことが重要なことなのでしょう。
--- 男性肥満者の食生活と内臓脂肪の関係について
花王株式会社との共同研究で、肥満男性約300人を対象に、CT(コンピュータ断層撮影)で測定した内臓脂肪面積と食習慣の関係を調査しました(第62回日本栄養・食糧学会大会で発表)。その結果は、(1)年齢が高くなると、内臓脂肪の割合が確実に増える(2)夕食の摂取量が多い、あるいは夕食時間が遅いほど内臓脂肪が多い(3)アルコール(ビール、酒など)を多く飲む人ほど内臓脂肪がたまりやすく、緑茶などの茶系統の飲料を多く飲む人ほどたまりにくい、というもの。従来の頻度調査と違い、カロリー計算した詳細な食事記録に基づき、全体の脂肪と内臓脂肪の面積比から導きだしています。その他、嗜好(しこう)飲料の類は、肉・穀類よりも内臓脂肪面積に影響することなども明らかになっていますが、これらの臨床試験結果は、メタボリックシンドロームの食習慣などとも見事に重なります。
--- リバウンドの研究も
確かに、よくリバウンドする人がいます。一般的にはたくさん減量した人ほどリバウンドしやすい。次に、リバウンド予防の研究に取り組んでいます。京都府長岡京市の追跡調査で明らかになったのは、運動習慣のある人は、リバウンドしにくいということ。リバウンドしやすい人は、どうも食べることでストレスを解消しようとするらしい。やせるには、ゆっくり確実に。それも食と運動の両方併せてやらないと減量が継続できないのです。運動で内臓脂肪を減らすには週に150分が目安、小刻みでもいいのです。ある調査では、通勤のとき片道歩く時間が、10分未満の人と20分以上歩く人では、糖尿病の発症率が違う。減量と運動をきちっと実行すれば、糖尿病の発症率は半減することが明らかになっています。
--- 歩く環境も大事ですね
「ヘルスプロモーション」の一つとして兵庫県・明石市立保健センターがおもしろい取り組みをしています。施設のエレベーター前に「期間限定ダイエット」、階段ごとに「階段は無料のエクササイズ」などと張り紙をして、市職員に階段を使ったダイエット運動を勧めているのです。張り紙を読んでいくうちに、階段を上ってしまう仕掛けです。海外でも、エレベーター前から記した人の足跡をたどるうち階段を上っているという例を見かけました。飽食・運動不足の現代、各地域・医療者がさまざまな工夫とアイデアをこらして、リスクを減らし、メタボ予防の環境を整えていくことも大事なことなのです。
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【プロフィル】坂根直樹
さかね・なおき 自治医科大学卒業。京都府立医科大学第1内科、地域医療に従事後、神戸大学医学部分子疫学を経て現職。

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