特定健診・特定保健指導(1/3)「日本はすごい」海外でも高い関心
2008.07.20

 メタボリックシンドローム撲滅委員会は5月29日、東京のホテルで開かれた。委員長の松澤佑次・住友病院院長、委員の北徹・京都大学副学長、齋藤康・千葉大学学長、松岡博昭・獨協医科大学教授、渡邊昌・国立健康・栄養研究所理事長、春日雅人・国立医療センター研究所長とオブザーバーの関英一・厚生労働省健康局生活習慣病対策室長が参加。今年から進められている特定健診・保健指導をめぐる課題やメタボ予防対策の拡大について話し合った。

 
■検査値、リスク認識正しく理解して

関 氏 特定健診・特定保健指導の制度が始まる前には、新たに実施主体になる健康保険組合などのうち、これまでの取り組みの経験が少なかったところは、新しく事業をしなければならないという重圧感もあったようです。しかし、全体の機運としてこの事業を通じてきめ細かな対象者の情報を、多面的・立体的に入手できるようになり、そうした情報を活用して対象者によりよいサービスを行うという前向きの事業展開をしていこうと尽力されている組合も多いということは、非常に心強い気がします。

 国民健康保険での市町村の取り組みも同様で、意欲的に取り組んでいるところが全体を引っ張っていく傾向が見えます。対象になる被保険者らに、どのようにメッセージを届ければ聞いてもらえるか、ということまで含めてきめ細かい前向きな議論がなされているという印象です。

 もう一つ大事なキーワードは、「連携」です。実施主体の医療保険者は、事業を請け負う健診・保健指導の実施機関との間はもちろん、労働安全衛生面をになう事業主との間で、また、健康増進計画づくりなど環境整備面で重要な役割をになう都道府県や市町村との間で円滑な連携を取ることが重要です。一方、ここはいちばんご苦労の多いところでもあるかと思います。そういった課題を克服して、前向きに取り組んでおられる医療保険者、関係者の方々も多く、非常に勇気づけられる動きと思っております。

松澤氏 特定健診については、日本の新聞に掲載された私のインタビュー記事が英訳され、米国の新聞のオピニオン欄に載りました。「長期的には心筋梗塞(こうそく)など動脈硬化による重い病気が減り、医療費削減など効果が出るだろう」という内容で、それを、海外の人が読んでいて「日本はすごいことをやっている」とシカゴで開かれた国際動脈硬化学会(IAS)の理事会の席上でも話題になりました。欧米の学者は日本以外の国では絶対できない制度だとものすごく感心していました。日本は健康立国として自慢していい、と思います。

 日本の場合は、企業の健康保険加入者は、以前からきめ細かい健診制度がありました。ただ、国民健康保険の加入者で自発的に市民健診を受けていない人にとっては、義務化されるのは大きな変革です。尼崎市の保健師、野口緑さんの話でも、収縮期の血圧が200mmHg(正常範囲130mmHg以下)なのに、放っていた人や、糖尿病の合併症がひどい人でも今回の特定健診ではじめて発見された人が出てきているとのことです。

 ただ、この健診制度の現場で生じるいろんな問題に対してはできるだけ速やかに改善し、建設的にやっていけば、女性は現在も世界一長寿ですが、男性も長寿のトップになるような結果が出てくる、と期待しています。

北氏 特定保健指導で行動変容の問題が重要である。母親の教育や子供の時からの行動パターンはなかなか変わらない。だから、家庭教育の視点をどう変えていくかが、非常に重要なところではないかと個人的に思っています。

 日本動脈硬化学会としては、年に6カ所か7カ所、大都市で医師向けのメタボリックシンドロームを含んだ動脈硬化性疾患予防をめざす普及・啓発セミナーを行っています。そこで思うのは、日本は循環器系の病気の中で脳血管障害の発症率が、心筋梗塞など心血管障害の発症率より高いことです。ところが、大学の教授を見ると、圧倒的に心血管障害をテーマにした教授が多く、とてもアンバランスです。

 そのギャップをどうやって医療の面で支えていくかという問題と、40歳代、50歳代は入院患者の中に、脳梗塞が多くなっていますので、学会としてはその人たちのQOL(生活の質)を守ることに努力していきたい。また、学会の動脈硬化の診療ガイドラインで新たに示された「総コレステロールではなく、悪玉(LDL)コレステロールを測定する」ことについても強調していきたい。

松岡氏 高血圧の領域ではよく2分の1の法則ということが言われています。高血圧であってもそれを認識している人は半分しかいない。これはメタボでも同じだと思います。また、高血圧の治療をきちんと病院で受けている人も、その認識している人の半分しかいない。さらに、きちんと管理されている人もその半分で、最終的には高血圧の8分の1しかきちんと管理されていないということになります。

 そういう意味では、このメタボ撲滅委員会が中心になり、大勢の方々にメタボを認識してもらうのがいい。患者の数が増えるだけじゃないかという議論は全くあたらない。メタボのリスクを認識することにより、生活習慣をきちんと改善することが大切であることを知ってもらいたい。

 日本高血圧学会としては、3年前から高血圧協会をつくり、市民への啓発活動に力を入れております。世界高血圧デーの5月17日を日本の高血圧の日と定め、この前後の期間にキャンペーンを行っています。このような啓発活動をメタボとも結び付けたいと思っています。

齋藤氏 実務的なこととしては、もう少しメタボに対して、国民的に正しい知識を持つ国民になってほしいと思います。千葉県のある地方で疫学的に調べましたときに、あなたは「血圧」「コレステロール」「中性脂肪」「血糖」について、自分の値を知っていますかと聞いて、明らかに知らない人は一番悪くて、知って数値を言えた人が一番よかったというデータが、修士論文で出てきました。私はここが非常に大きなポイントだと思います。きちんと検査の値の持つ意味を知ってもらうということが、われわれの作業としてまだまだ残されている領域ではないかなという気がいたします。

(2008/07/20)


第一生命
オムロンヘルスケア
サンスター
大正製薬

    メタボリックシンドローム撲滅委員会とは メタボリックシンドローム撲滅運動キャンペーンの活動 メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛各社の取組み
委員長
   松澤 佑次(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
委 員
   門脇  孝(日本糖尿病学会理事長/東京大学大学院教授)
   島本 和明(日本高血圧学会理事長/札幌医科大学教授)
   北   徹(日本動脈硬化学会理事長/神戸市立医療センター中央市民病院院長)
   齋藤  康(日本肥満学会理事/日本動脈硬化学会理事/千葉大学学長)
   渡邊  昌生命科学振興会理事長)
   中尾 一和(日本内分泌学会前理事長/京都大学大学院医学研究科 内科学講座内分泌代謝内科教授)
   齋藤  勉(産経新聞社常務取締役 編集・論説・正論・写真報道担当)
   平田 篤州(産経新聞社総合企画室長)
   宮本 幸一(ニッポン放送常務取締役)
   中村 芳章(フジテレビジョン事業局長)
オブザーバー
   上田 博三(厚生労働省健康局長)
   木村 博承(厚生労働省健康局 生活習慣病対策室長)
   春日 雅人(国立国際医療センター研究所長)
   小林三世治(第一生命医長兼健康増進室長)
リーダー・総合監修
   宮崎 滋(東京逓信病院内科部長)
医学分野
   片山 茂裕(埼玉医科大学内科学教授・同大学病院病院長)
   横出 正之(京都大学探索医療センター・探索医療臨床部長・教授)
   和田 高士(東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授・同附属病院新橋健診センター所長)
   柴 輝男(三井記念病院糖尿病代謝内科部長)
   中川 徹(日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長)
医療・保健指導分野
   津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター副センター長兼健康開発部長)
   野口 緑(尼崎市国保年金課健康支援推進担当課長補佐・保健師)
運動指導分野
   宮地 元彦(国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム運動ガイドライン プロジェクトリーダー)
   斉藤 満((社)日本ウオーキング協会事業局長)
   菅野 隆(健康創研代表・健康運動指導士)
食事指導分野
   鈴木志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授)
   柴崎千絵里(東京女子医科大学病院栄養管理部)
   小野 真実(女子栄養大学食生態研究室講師)
メタボリックシンドローム撲滅委員会
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厚生労働省
学会
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協力団体
高尿酸血症・メタボリックシンドロームリサーチフォーラム
メディア
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第一生命保険相互会社 アステラス製薬株式会社 大塚製薬株式会社 オムロン・ヘルスケア株式会社
花王株式会社 キッセイ薬品工業株式会社 サンスター株式会社 第一三共株式会社
大正製薬株式会社 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 日本酪農乳業協会 バイエル薬品株式会社
明治乳業株式会社
特別協賛 特別協賛
賛助企業
株式会社カーブスジャパン日本ケミファ株式会社