長年日本一を誇っていた沖縄県が、平成12年に突然、男性の寿命が26位に。「沖縄・26ショック」といわれるほど県民の衝撃は大きく、復興への県民挙げての取り組みは、全国の健康キャンペーンの先駆けとなった。「健康おきなわ21」を推進する沖縄県健康増進課の大城馨班長は対策プランについて説明する。
「健康長寿県沖縄」というイメージは、観光産業などを支えるキーワードともなっていた。それだけに、平成19年に男女とも平均寿命の延びが全国平均を下回る事態に県では、長寿県復活に向けて行動計画を策定した。
全体目標は、「早世の予防」と「健康寿命の延伸」で、具体的には、「チャーガンジュー(いつも元気で)おきなわ9カ条」と銘打って、メタボリックシンドロームの考え方を導入したうえでまず、全県民を対象として生活習慣の改善を徹底する。次に国保、組合健保など医療保険者による「特定健康診査」でメタボの該当者と予備群を把握して、ハイリスクの人には、特定保健指導を行う。さらに、糖尿病、高血圧、がんなどの投薬治療を行うといった医療計画を併せて進め、総合的に長寿を底上げしていこうという作戦だ。アクションプランでは、各種団体・自主サークル・NPOなども「応援団」に加えて、県民挙げての支援態勢を整えている。
どこまで周知徹底できるかが、成功のカギとなるが、大城班長は「県の方で一括して応援団を募り、県民にも広く情報提供を呼びかけていく」と語る。
今、取り組んでいるのは、食事バランスガイドの沖縄版。沖縄独特のイナムドウチ(沖縄風みそ汁)など、郷土食の勧めを主に、カロリーの過剰摂取を戒める内容で、約3000人の県庁全職員に対し、日々の食事のチェックシートを配って1週間後に申告させることにしている。
ユニークな試みとして、北部の高校では、生徒自身が栄養バランスを考えた弁当を自作している。「ヤンバル甲子園」としてその内容を競うコンテストを開催する。運動に関しても宜野湾市では、歌に合わせてカーチャーシという沖縄独特の振り付け体操を推奨している。
特定健診・保健指導にあたっては、悩みも多い。市町村の住民健診率は、全国平均が43%なのに対し、沖縄17年度28・5%とかなり低い。県や国の健康・栄養調査の結果でも、BMI25以上の肥満者の割合がほぼすべての世代で全国平均を上回り、特に男性は20歳代で3割を超えている。
大城班長は、「チャーガンジューおきなわ9カ条には、実際に行動に移すための具体的な目標を盛り込んだ。一番の目標は、平均寿命を延ばそうということで、メタボの減少数は前期目標(平成24年度)10%減としているが、メタボ対策だけに限らず、長寿復活を最大の目標に懸命に取り組んでいます」と語っている。
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■保健師・健診センター・病院 画期的な連携システム
沖縄県で最も早くメタボの保健活動に取り組んだのが、沖縄県国民健康保険団体連合会(国保連合会)と南部地区(南城市、与那原町、南風原町)の保健師、栄養士ら。健診センターと病院の3者がネットワークを作り、健診データを共有して、十分に解析するという画期的なシステムに発展している。
「平成12年からの長野県保健師との勉強会が、本格的に取り組むきっかけでした。沖縄県の医療費の高騰を目の辺りにしており、レセプト分析や医療費との突合(とつごう)といった長野県での先進的な試みに大変刺激をうけました。実際に分析してみたら沖縄ではこんな大変なことが起きていたのかと、ショックも受けました」と国保連合会事業課の新里成美さん。
県は自営業が多く、沖縄国民健康保険の加入者が半分近くを占める。企業の組合健保による定期健診を受ける環境にはない。南城市役所健康課の井上優子さんは、「結局、私たち自身が健診データの読み取りもせず、生かし切れていないことに気付いたのです。すでに発症した人や健診を受けてもほったらかしの人など、データを見て予防が可能か学習するうち、介入の方法がつかめてきた気がします」と打ち明ける。
高額な公費医療を受けるのは、腎臓透析や急性心筋梗塞だが、発症した人は健診を受けておらず放置している人がほとんどだった。「これではいくら保健指導をしても、医療費削減につながらない。しっかり健診に来てもらい、予防あるいは治療にいかす。そういう意識をいかに持ってもらうかで苦心しています」と話す。
受診率を上げるための努力はすさまじい。「嘱託も入れて、1人当たり五、六百人を担当します。未受診者には、電話や個別に訪問したり、各団体にも集まってもらったり、家庭に伺ったとき、健診データを家族と一緒に見てもらったりもします。特に沖縄は、若いときからも肥満が増える傾向にあり、20歳から健診を始めています」と新里さん。
実は南部地区では、受診者一人ひとりの詳細なデータを分厚いファイルにまとめている。それを持って各人の必要な部分をピックアップして、説明に当たる。井上さんは「健診結果が何を意味しているか、自分の体にどういう変化が起きているか、自分なりにわかってくれば、健診を受けるという行動変容にもつながるし受診率も上がると思うのです」。
「26ショック」ともいわれる沖縄の長寿の急激な低下。一体何が問題なのか。
高脂肪食、動かない、飲酒が主な原因で、南風原町保健福祉課の具志堅志保さんは、「共働きが多いため外食をよくする。米軍が持ち込んだ米国の食文化の影響が大きい。ファストフードが早期に入り、粉ミルクの消費も全国1位。魚も揚げるものだと思っていたし、輪ゴムが持ち上がるくらい厚い弁当も、学校で生徒目当てに売りに来る」と説明する。
「基地で働く人が多いせいか、70代の人でも大きなステーキを平らげるし、ファストフードも好物です」と井上さん。
沖縄は、カロリー自体は少ないが、脂肪摂取率が格段に多い。「沖縄の伝統食は悪いものでもなく、むしろ健康的でしたが、例えば、ゴーヤーチャンプルを作る際に、以前は、かつおだしにゴーヤーとお豆腐だけだったのが、このごろは、豚肉や卵なども混ぜて作る。豚足だとか、昔ははれの日しか食べなかったようなものが、普通に食べられるようになった」と南風原町役場健康保険課の伊集京美さん。
「4月から始まった特定健診がチャンスだと思っています。健診データを基にフォローして、少しでも良くなるように、継続させるなど、正攻法で具体的に進めていけば希望も出てくると思うのです」と南風原町役場福祉保健課の真謝雅代さんは話している。

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