【正論】メタボリックシンドローム特集
小児メタボの現状と対策を考える(3/3)
■3〜5歳が要注意
2008.12.25

---子供の体重は、どのように変化していくものなのでしょうか。
大関  大人になるとBMIは一定になってきますが、子供の場合は年齢とともに変動していきます。乳児期のBMIは高めで、赤ちゃんは見るからに脂肪がついていますよね。これは肥満ではなくて、エネルギーを蓄えたりするための赤ん坊の特質。幼稚園のころにBMIは低下して、3〜5歳ごろは人生で一番痩せている時期です。そこから思春期に向けて、再び上昇していくという変化をたどります。

 この体脂肪が減少から増加に転じる現象は、アディポシティ(BMI)リバウンド、脂肪蓄積の反跳と呼ばれています。肥満の人をさかのぼって調べると、リバウンドが早く起こっており、ここが成人肥満の起源である可能性がある。リバウンドが早期であるほど、成人肥満が生じやすいと考えられます。

---3歳から5、6歳ごろが重要な時期だということですね。
大関  ただし、この時期は肥満のスタート地点であり、ぐんぐん増えているわけではないので気付きにくい。それをどのように把握できるかが重要です。残念ながら、今の日本の制度では3歳児健診の後は、小学校にはいるまで決められた健診はありません。ですから、母子健康手帳の裏についている乳幼児身体発育曲線のグラフを参照して、ご家庭で発育状態を確認するといいでしょう。


---子供はふっくらしていた方がかわいいと思って見過ごしてしまいそうですが。
大関  標準の小学一年生はやせこけていてかわいくないんですよ。テレビに出てくる子役などでかわいいと思う子は太っている。子役さんで大人になってから太る人が多いでしょう。見かけだけでなく、数値も参考にして計算してみないといけません。

 肥満の子供のもう一つの特徴は、標準より身長が高めのことが多いのです。早く成長して早めに身長が止まる。そして、よく計算してみると、身長より体重の増え方が大幅に上回っているということになります。

ほかにも注意が必要な時期はありますか。
大関  小学校高学年から中学生にかけての思春期が、もう一つのポイントです。生活習慣の混乱が肥満の原因だとすれば、体を動かさない夜型の生活に不規則な食事や睡眠、極端なことをいえば引きこもりや不登校などから思春期の肥満になることがあります。

 いじめの対象になったり、体型のコンプレックスから人前に出られなくなったりと、精神的な問題点を伴いがちなのが、この時期の特徴です。それが元でまた食べ過ぎたりと、悪循環で抜け出せなくなってしまう。身長も大人に近づいてきている時期で、大人の肥満に直結します。思春期の肥満は非常に大事な問題です。

---小児肥満の対処法は。
大関  重い肥満になってしまった人は、医療機関を受診して食事療法などで体重を減らす治療をしなければならないのですが、それ以外の人たちは、体重が増えないように予防することが重要です。大人はメタボからの脱却が焦点ですが、子供の時期は太っていようがいまいが、より健康的な生活習慣をつけてもらう。子供のメタボ対策は治療の部分と予防の部分を分けた方がいい。全員にダイエット食を与えるということではないのですから。

 健康的な生活習慣のポイントは三つあります。ノーマルな食事、バランスの取れた食事を知ること。偏食をなくすこと。そして、運動・スポーツを楽しむためのスキル・能力を身につけること。

 偏食を直し、いろいろなものを食べられるようにしておくことは、将来非常に役に立ちます。食べられないものがあると、栄養指導を受けても実現できませんから。キャッチボールやサッカーなど、基本的な運動のテクニックは、身につけておけばいつでも使うことができます。必要に応じて生活を修正できる能力が大事なのです。

---今後の小児メタボ研究の展望は。
大関  メタボリックシンドロームの考え方を子供に導入する意義は、一つは非常に簡単に把握できるからです。子供の体重の評価というのは基本事項なのですが、年齢によって変化するため非常に難しい。それに比べると、メタボの腹囲の基準は簡略化してあって使いやすい。家庭で測ってもらえばすぐに分かります。医療機関は当然のこと、家庭での健康管理が可能になり、子供のころから生活習慣に対する認識が高まることで、社会全体がいい生活習慣の確立を考えていくことが期待できます。
 厚生労働省研究班では診断基準策定に続き、今年度から3年かけて実際的な介入方法の研究を行う段階に入っています。食事や運動を具体的にどうすればいいのか、予防のためのガイドラインを提示できればと考えています。


【略歴】
大関武彦氏 昭和20(1945)年生まれ。46年、東京大学医学部卒業。東京大学小児科、国立小児病院内分泌代謝科などを経て、57年、鳥取大学小児科助教授。平成2年から3年、スイス・チューリッヒ大学小児病院。9年、浜松医科大学教授。平成17年度から厚生労働省の小児期メタボに関する研究班で主任研究者を務める。

(「正論」2月号)


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