メタボ撲滅の国民運動 世界で高い評価
- 門脇 孝氏に聞く(2/2)
2009.02.20

■日本人の特徴 小太りでも容易に糖尿病に

---糖尿病の予防対策は

 糖尿病の場合も、早期発見、早期治療が重要。福岡県・久山町の研究データでもメタボを経て糖尿病になった人は、心筋梗塞、脳梗塞のリスクが、そうでない人に比べ約5倍高いことがわかっています。メタボが解消できれば、糖尿病の進行・重症化抑制と同時に、将来の動脈硬化を基盤とした合併症の抑制にもつながるので、これからはメタボ撲滅の運動と連動しながら、糖尿病の予防対策を取っていく必要がありますね。

---生活習慣の改善については

 私は3つのことを強調したい。ひとつは、エネルギーの制限。同じ体重でもよく体を動かしている人の方が長生きします。運動すれば内臓脂肪がつきにくい体質になり、筋肉が増える効用が如実に表れます。2番目ができるだけ和食中心の食生活を取り入れること。子供のころから、動物性脂肪の取り過ぎをストップし、和食のうま味を体験させるような「食育」の推進が重要なことになってきています。3番目のキーワードは、もっとも強調したい点ですが、やはり体を動かすことができやすい環境整備ですね。会社の中で運動をサポートするシステムも必要です。ウオーキングにしても、自転車道がないものだから、ぶつかったりして安全に歩ける環境も少ないのです。今後は、もっと皆が安心して健康づくりが実行できるような町作りが大事です。

---脂肪摂取の状況は

 「健康日本21」を多くの人が失敗だったというけれども、中身を詳しく見てみると、食塩を13グラムから10グラムまで下げることを目標に、現在では平均11グラムまで下がり、2010年には達成できる見通しも出てきました。さらに脂肪摂取も一時は急増したが、最近のデータでは、出発点の26%台よりさらに少ない25.5%ぐらいに下がってきています。特に女性の場合は、40〜50歳代の女性では、肥満傾向が続いていましたが、この世代でも最近、体重が減り始めています。国民全体として高脂肪食は減り始めてはいますが、中年男性はまだ肥満傾向がストップしていない。特に問題なのは運動で、1日の歩数が毎年、100歩ずつ減っていることですね。

---糖尿病は、初期治療も大事なことだと

 英国の「UKPDS」という、糖尿病薬(SU薬)とインスリンを使った臨床試験で、血糖値を下げる治療がどれだけ長期効果があるか調べました。10年にわたる追跡結果の結論として糖尿病の合併症として知られている網膜症や神経障害の抑制には効果があったが、心筋梗塞や死亡などには有意な結果が得られなかった。ところが、介入治療をやめてさらに10年後、今度は患者さんの心筋梗塞や死亡などが有意に抑制されるという結果になった。それは初期治療を十分に行っていれば代謝の記憶が体内に残っていて、あたかも遺産のように効果を発揮する、そういう意味で「遺産効果」とも呼ばれています。

 インスリンは、最後の手段だと考える医師も多いのですが、本来、糖尿病はインスリンが不足する病気ですから、インスリンを補う治療は体にやさしく、こうした臨床試験の結果からも、早期に経口糖尿病薬と基礎インスリンを組み合わせる療法も広く行われるようになってきました。糖尿病には、早期発見、食事運動療法が大事であるとともに、糖尿病の初期の段階でインスリンや糖尿病薬による治療の意義についてもさらに広めていきたい。

                   ◇

【プロフィル】 門脇 孝

かどわき・たかし 東京大学医学部卒業。米国国立衛生研究所(NIH)客員研究員、東大医学部第3内科講師などを経て平成15年、同大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授。専門分野は、糖尿病・肥満、インスリン抵抗性の分子機構を研究。日本糖尿病学会理事長、日本肥満学会理事など。日本医師会医学賞、ベルツ賞、上原賞など多数。今年度から、メタボリックシンドローム撲滅委員会委員に就任。

(産経新聞 2009/02/20)


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委員長
   松澤 佑次(日本肥満学会理事長/(財)住友病院院長)
委 員
   門脇  孝(日本糖尿病学会理事長/東京大学大学院教授)
   島本 和明(日本高血圧学会理事長/札幌医科大学教授)
   北   徹(日本動脈硬化学会理事長/神戸市立医療センター中央市民病院院長)
   齋藤  康(日本肥満学会理事/日本動脈硬化学会理事/千葉大学学長)
   渡邊  昌生命科学振興会理事長)
   中尾 一和(日本内分泌学会前理事長/京都大学大学院医学研究科 内科学講座内分泌代謝内科教授)
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   柴 輝男(三井記念病院糖尿病代謝内科部長)
   中川 徹(日立製作所健康管理センタ放射線診断科主任医長)
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   菅野 隆(健康創研代表・健康運動指導士)
食事指導分野
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