メタボで「脳卒中リスク2倍」診断基準と合致する危険因子(1/2)
2009.03.03

 「脳卒中」の病型パターンが大きく変わってきた。以前多かった「脳出血」が減り、動脈硬化や飛んできた血栓が原因で血管が詰まる「脳梗塞」が増えている。一方、メタボリックシンドロームと診断された患者さんからは、脳卒中の確率がおよそ2倍高まるというデータも出始めているという。「寝たきり」の最大要因でもある脳卒中。その発症には、“前触れ”があることもあり、予防対策として普段から生活習慣や高血圧・高血糖・肥満などを改善しておくことが肝心だ。脳卒中治療ガイドラインにも取り組んでいる国家公務員共済組合連合会・立川病院院長の篠原幸人氏に聞いた。

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---脳卒中というと

 わが国では、第二次世界大戦直後は結核が死亡率第1位でしたが、1960年代からは脳卒中が死亡率ナンバーワンとなりました。近年は、がんが1位となり、心筋梗塞などの心臓病が第2位、脳卒中が3位となっています。しかし急激に起こる病気としては、欧米では心筋梗塞などの心臓病が多いのに比べ、日本は脳卒中の方が多いのが特徴です。脳卒中の死亡率は全体的に減りつつありますが、それは脳出血が急激に減ってきたためで、脳梗塞は減少せず、1970年代半ばから脳梗塞が脳出血を上回っています。現在、脳梗塞を含めた脳卒中の発症直後の死亡率は、治療の進歩などで10%以下で推移していますが、今でも多くの人が何らかの後遺症を持ち不安を抱えながらも通院を続けています。脳卒中の通院患者数は、およそ140万人から150万人といわれていますが、通院していない人を含めると、もっと多数の脳卒中後遺症患者さんがいると専門医らは指摘しています。

---脳卒中のパターンが変わってきた

 脳出血が急激に減ってきたのは、塩分摂取が減ってきたのに加え、脳卒中の原因となる高血圧の治療が一段と進んだ結果だとみられます。今は、脳梗塞が脳卒中死因の約75%・脳出血が15%・くも膜下出血が10%という頻度になっています。これは劇的な変化です。脳卒中には、脳の血管が詰まって血液が流れなくなる「脳梗塞」と、「脳出血」の2つのタイプに分かれますが、その脳梗塞も、動脈硬化が原因で太い脳血管や頸部血管が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、心筋梗塞や心房細動でできた血栓が脳へ飛んでいって血管を詰まらせる「心原性脳塞栓症」、脳の細小血管が詰まる「ラクナ梗塞」の3種類あります。これらにも時代の変遷があって、前二者が最近は増えてきています。

---というと

 脳梗塞の中でも、わが国ではかつてラクナ梗塞が50%以上を占めていました。しかし今や都市部を中心にアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症が急激に増え、ラクナ梗塞よりも多くなってきました。ラクナ梗塞の最大の原因は高血圧ですが、アテローム血栓性脳梗塞は、高血圧ばかりでなく、脂質異常、あるいは糖尿病、喫煙なども原因となります。生活習慣の変化に従って明らかに脳卒中・脳梗塞の病型も変わってきているのです。これはわが国全体の傾向といって間違いありません。予防という観点からも、もはや見方を変えていかなければいけないでしょう。

---メタボとの関係について

 メタボが脳卒中、特に脳梗塞の危険因子であることは間違いありません。いくつかの長期的な疫学的研究でも証明されつつあります。数少ないデータを見ても、いわゆるメタボリックシンドロームと診断された患者さんからは、2倍ぐらい脳卒中が多くなるというデータが出始めていることは確かです。肥満だけで脳卒中が起きやすくなるかどうかは、まだ十分証明されてはいませんが、メタボの診断基準にあるように、肥満に伴う高血圧・高血糖・脂質異常などの危険因子は、それこそ脳梗塞の危険因子と合致します。こうした危険因子は、最近の研究でも、脳卒中ばかりでなくアルツハイマー病などの認知症にも大きな危険因子となることが明らかになってきており、ともに共通する加齢やメタボ・生活習慣の改善が脳卒中や認知症の予防にもつながります。腹囲測定値にどれだけ意味があるかは別として、この規準のいいところは、自分で簡便に測れて、気をつけようという自発的な啓発の道具となるところですね。

---今回、脳卒中の治療ガイドラインも改定作業中だとか

 今回の脳卒中治療ガイドラインでは、先般、刊行された「高血圧治療ガイドライン2009」も参考にしながら、脳卒中専門医の独自の観点にたった降圧治療目標なども盛り込む考えです。前回、2004年の脳卒中治療ガイドラインと同様、「日本人による日本人のための、日本人のデータを重視したガイドラインづくり」を第一の目的としています。また、今までの治療法についても、エビデンス(科学的根拠)を重視し、薬物治療として本当に効くかどうか一つ一つ明確にしていこうと考えています。



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