食後高血糖は“隠れ糖尿病”(2/2)
2009.03.19

◆痩身でも内臓脂肪蓄積は要注意、血糖の厳格な長期管理が有効

 薬物治療では、食事に対するインスリン分泌を促し、食後高血糖を改善するグリニド薬(グルファストなど)や、インスリン抵抗性を改善するチアゾリジン薬(アクトスなど)といった薬剤をそれぞれの病態に応じて適切に使うことが重要です。

---メタボとの関係は

 「アディポネクチン」という内臓脂肪のホルモンに注目しています。肥満に伴い分泌が落ちるアディポネクチンが、インスリンの働きを助け、糖や脂質代謝、引いては動脈硬化にかかわることを、私たちは明らかにしてきました。一見やせていても、実は内臓脂肪が蓄積し、血糖コントロール悪化の原因の可能性となっている場合があります。そのための簡便な方法として自分でも測れる腹囲径の診断があるのですね。

---海外の臨床研究では

 最近、米国で「ACCORD」「VADT」研究などいくつかの大規模臨床研究が発表されました。ACCORD研究は心血管病のリスクを減らす目的の研究でしたが、血糖値を厳格に管理しようとした患者さんで重篤な低血糖や過度の肥満が増加し、かえって死亡数が増える結果となり、センセーショナルに伝えられました。ACCORD研究の一つの教訓は、重症低血糖をきたさない治療が重要だということです。この研究のように飲み薬やインスリンを短期間に多剤投与し、血糖を管理するやり方は、日本ではあまり行われていません。生活指導を徹底し、少量の薬物で体重を増やさず、低血糖を起こさないようにすることが肝心なのです。VADT研究では、早期に介入すれば心血管病を抑制することも可能なことが示されています。また、「UKPDS」という臨床研究では、初めの17年では懸命な療法を施しても結果が出ませんでしたが、さらに8年後の調査では心血管病の死亡率が減少していました。これを「遺産効果」と呼ぶ人もいますが、血糖も長期間、厳格に管理しないといけないということが、共通認識になったわけです。これらをまとめると、低血糖をきたさず長期にわたって良好な血糖コントロールを維持することが、動脈硬化を抑制することにつながるといえます。

---わが国での取り組みは

 日本での2型糖尿病患者さんの心血管病合併症抑制のため、「J-DOIT3」研究が進行しています。目標は心血管障害や死亡をいかに減らすかで、約2500人の患者さんを対象に、血糖・血圧・脂質の厳格な管理の有効性を検証しています。「J-DOIT1」研究は糖尿病の発症予防、「J-DOIT2」研究は、糖尿病治療の中断をいかに防ぐかを目的に研究が進んでおり、徐々に結果が出始めています。

---特定健診・保健指導については

 まずは食事・運動のバランスと、体重や腹囲への関心が重要であり、早期からの血糖・体重・血圧・脂質などの総合的な管理が大切であることを強調したいですね。海外の臨床研究には、当初の研究が済んだあとも長期にフォローし、どんな効果が得られるか追跡しているものがあります。臨床研究を長い目で見ることも大事なことで、特定健診・保健指導にもあい通じるところがあると思います。健診データを有効に活用し、患者さんに適切な指導をする効率的な方法を確立することが大事です。いい方法が見つかれば、世界各国の生活習慣病対策に参考になるのです。その意味で、糖尿病対策と絡められる今回の制度には、期待するところが大きいのです。

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【プロフィル】寺内康夫

 てらうち・やすお 東京大学医学部卒業。同附属病院特任講師などを経て、平成17年、横浜市立大学大学院医学研究科教授。

(産経新聞 2009/03/19)
              


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