高血圧、糖尿病などの生活習慣病を背景に、「急性心筋梗塞」が増え始めている。中でも糖尿病は、「血栓症」(血液の塊ができる病気)と深くかかわっており、血管内の血が固まりやすくなり、動脈硬化を進展させる作用が強くなるらしい。こうした糖尿病が絡む心筋梗塞や脳卒中の発症をどう抑制するかが大きな課題。多くの臨床研究を手がけた熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学の小川久雄教授は、「循環器疾患の入院患者の半数近くが糖尿病を合併しており、重大な危険因子として日本人の、確たる治療・予防エビデンス(科学的証拠)を構築する必要がある」と指摘する。
■「血栓症」が動脈硬化を進展
---糖尿病患者は、増える一方ですね
厚生労働省の平成19年度調査では、わが国で糖尿病が強く疑われる人は890万人、その可能性が否定できない人と合わせると2,210万人ですから、もはや日本人の5人に1人が該当することになります。私は、28年くらい前から急性心筋梗塞の発症にかかわる要因(危険因子)の研究を始め、8年前から全国の患者さん5,300人に登録いただいて、「JACSS」という名称の研究を行いました。急性心筋梗塞を発症した患者さんと健康な人のグループに分けて比較したところ、急性心筋梗塞を発症する危険因子の筆頭は高血圧、2番目が喫煙、それとほとんど並んで3番目が糖尿病でした。
実はその後も経年的に調査していますが、年を追うごとに糖尿病の危険因子としての重要性が高まってきています。実際、心筋梗塞などで大学病院の循環器に入院してくる患者さんは、すでに半数近くが糖尿病であり、高血圧で入院中の患者さんも糖尿病を合併している人がほぼ半数に上ります。
---糖尿病の血管病変はすぐ分かるものなのか
例えば、患者さんの心臓の血管状況を診断するために、検査(冠動脈造影)を行いますと、糖尿病の人は、血管が全体的に細くなっており、これはすでに心臓を取り巻く動脈(冠動脈)の動脈硬化が進んでいる表れとわかるのです。また、特に糖尿病の患者さんでは、この現象が広い範囲に広がっている(びまん性)のが特徴です。心筋梗塞や狭心症の患者さんは、こうした血管の特徴から逆に糖尿病を患っているといい当てることもできるくらいなのです。
■目立つ女性の糖尿病リスク
---なぜ、増えてきたか
一番の原因は、食事の影響だろうと思います。生活スタイル、運動不足などもありますが、糖尿病患者さんは、なかなか食事内容を変えにくいところがあります。急性心筋梗塞患者を調べた「JACSS研究」でも、危険因子1番手としては高血圧に変わりはありませんが、糖尿病と合併するとさらにリスクが高まり、症状も悪化しています。
特に目立つのは、女性の心筋梗塞。発症の要因として男性は高血圧、喫煙、糖尿病の順なのに対し、女性は、喫煙(非喫煙者と比べリスク8.2倍)がトップ、ついで糖尿病(健常者と比べ6.12倍)となり、高血圧(5.04倍)を上回っています。諸外国のデータでも、糖尿病を患った女性の予後は、概して男性より悪いのですが、日本女性の場合は、発症の要因としても糖尿病のリスクが格段に高いことを示しています。喫煙はやめてもらう以外ありませんが、糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、まず予防を考えて食事などの生活スタイルを改善することが肝心です。
高血圧は塩分を控えめに、糖尿病対策は、過食をやめて味の濃い外食をできるだけ減らし、甘いものを抑える、その3つが大事ですね。
また「JACSS研究」では、60歳を境に、その前の若い年代では、コレステロールや中性脂肪などが高い値(脂質異常)を示す割合が上がることが確認されています。特に心筋梗塞は、早い人は30代から。主に40代の人が多く発症しており、大概、糖尿病と脂質異常を合併しています。高血圧や糖尿病、脂質異常は生活習慣病と呼ばれ、その根底的な要因であるメタボリックシンドロームの段階で対策を講じることが大切です。

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