■症状があれば疑ってかかることが大事
---薬剤溶出型ステントの問題点は
「晩期ステント血栓症」という言い方で数年前、欧州の学会で問題になりました。薬剤溶出型ステントを血管に留置後、1年以上経過したにもかかわらず、突然血栓ができてステントが詰まってしまう危険性が指摘されたわけです。ところがその後の研究で、こうしたリスクが別に薬剤溶出型ステント特有の問題ではなく、植え込み手技の不完全だったり、抗血小板薬を途中でやめてしまったりなどの原因が指摘され、薬剤を塗っていないステントも同じような問題点があることが分かってきました。
薬剤溶出型ステントも改良が進み、現在私どもの病院では、ふたつの新しい薬剤溶出型ステントの国際共同治験を行っています。薬剤を塗っていないステントは再狭窄が40%ぐらいで起こるのが問題点。広がったにもかかわらず、ステントの内側に血管内膜細胞が異常に増殖してきて、半年ぐらいのうちにまた、狭窄を招くことになる。だから、それを防止するために内膜細胞増殖や分裂を抑える抗がん剤や免疫抑制剤が有効だともいわれており、治験が始まっているのです。
---狭心症や心筋梗塞を早く見つけるには
やはり重要なのは、患者さんの訴えです。基本的にはまず心電図をとりますが、最近では、画像診断が進歩し、造影剤を使ったCTスキャンが非常に有効で、狭窄部分などを明確に映し出します。場合によっては、MRI(磁気共鳴診断装置)でもよく分かります。
---冠動脈インターベンションで急性心筋梗塞の死亡率が劇的に下がった
冠動脈障害の、こういう手技による再還流療法で、予後が非常に改善したのは確かです。心血管インターベンション学会の統計では、自然経過で何もせずに心筋梗塞になった場合、急性期に40%ほど死亡するといわれていたのです。それが、今では冠動脈インターベンションの普及で、死亡率は3?4%に下がってきたのですから、それこそ激減です。できるだけ3時間以内に、それも対処が早ければ早いほど越したことはないのです。
---再発も多い
確かに。心筋梗塞を再発した場合の死亡率は、40%を超えます。だから、再発をなんとしても防がなくてはいけません。再発の場合でも、決してステントは用をなさないわけではありませんが、再発の間に心臓の筋肉がダメージを受けていますから、完全な回復には至らないことが多いのです。
■食事情悪化で欧米並みに
---患者さんに対するアドバイスは
まず欧米スタイルの生活習慣から、昔の本来の日本のスタイルに戻ることが、こういう病気を減らすことになります。要は、脂肪が少なく繊維物質の多い食生活や運動に励み、動脈硬化に陥りやすい生活を改善すること。リスクの高い人であれば、現在はコレステロールなどを下げるよい薬もあり、早めに是正しておくことです。これは再発予防にもつながります。それと日本には、優れた冠動脈インターベンションの医療者がたくさんいます。恵まれた条件にあるわけですから、皆この病気の危険性を知って早く病院に来ることが肝心です。病気になる前のメタボ予防も確かに重要で、次の世代のためにも一次予防をしっかりしてほしいものですね。
現在米国には、日本の10倍の患者さんがおります。日本の食事情が悪くなれば、米国なみに心筋梗塞が増えることも考えられます。粗食の時代に育った人たちに心筋梗塞の発症が少ないことは理解できますが、次の世代はどうなるか。体の構造的な変化が疾患を呼び起こしているのであり、全体的に見たらこういう病気の発症には、何十年ものタイムラグがあります。このままの情勢で動脈硬化が増えていけば、20?30年後には、日本人の心筋梗塞がいまより10倍ぐらいに増加することは間違いないと思われるのです。
【Profile】齋藤 滋
さいとう・しげる 大阪大学医学部卒業。関西労災病院内科医長を経て昭和63年、湘南鎌倉総合病院開院と同時に同病院循環器科部長、平成12年副院長。冠動脈インターベンションの第一人者、海外での普及に努める。

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