心臓を養う冠動脈に血栓が詰まり、急性心筋梗塞や不安定狭心症、突然死を招く「急性冠症候群」。かつては病院に運ばれても極めて予後が悪かったが、ここ十数年は心臓カテーテル・ステント治療(冠動脈インターベンション)などの急速な進歩で、例えば東京の場合、死亡率が20%から6〜7%にまで劇的に下がった。1分1秒を争うこの救急治療法は、搬送時間の短縮とともに、AED(自動体外式除細動器)や心臓マッサージなど、心肺蘇生に対する周りの人や家族の市民協力が不可欠だ。長年、病院・行政と連携して独自の治療・搬送システムを築いてきた東京都CCUネットワーク(連絡協議会)の努力も見逃せない。同連絡協議会会長で榊原記念病院の高山守正副院長(循環器内科部長)に聞いた。
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■冠動脈に「血栓」、心筋梗塞・狭心症へ
---「急性冠症候群」というと
先日、話題になりましたが、東京マラソンに参加して倒れたタレントの松村邦洋さんのように、若くても危険な「急性心筋梗塞」になる恐れがあります。ことに最近、病院に20代の人も運ばれるのが珍しくなく、若年化しているのが問題なのです。
「急性冠症候群」は、心臓を養う冠動脈が血栓によって急に詰まって起こる病気のことです。急性心筋梗塞は、その典型例です。急性冠症候群の考え方が確定したのは、15年前、米国のフスター博士が提唱したのがきっかけです。しかしそれ以前、30年ほど前には心臓へ薬物を注入したりすることが禁忌の時代ではありましたが、患者に冠動脈造影を試みた研究者が現れ、くっきり映った冠動脈の途絶から、心筋梗塞というものも、冠動脈に「血栓」が詰まって起きることが初めて報告されたのです。
---すると、原因の血栓を取り除くのがいいと
その通りです。取り除くためには、充満した血栓を溶かして血液が流れる血管の通りをよくする、つまりカテーテルで血栓溶解薬を直接注入しつつ再開通させる方法です。私は日本医大のCCU(急性冠動脈疾患集中治療室)に在籍していた昭和56年ごろから、すでにカテーテル治療を始めていました。当時から血栓溶解薬剤を静脈注射する薬物療法が始まっており、それと並行してカテーテル治療も行われていましたが、静脈注射薬物単独より、カテーテルから直接、閉塞した冠動脈へ注入した方がはるかに効果が優れていることが欧米から報告され、わが国でもその治療法が始まったのです。技術的にも優れた手技が必要です。その後、60年代から緊急で冠動脈バルーン治療が行われるようになり、風船で血管を広げる治療が次第に本格化する一方、平成6年からは金属のステントを留置する手法も広まったのです。わが国では欧米に先駆けて、かなり早くからカテーテル治療が普及しました。日本の得意技でもあったのです。今や、この療法が世界的にも認知されて逆に欧米が追いかけている状況なのです。
---「狭心症」というと
階段を無理して上ったりすると胸が苦しくなり休むと1〜2分で楽になってくる症状が特徴です。血管に悪玉コレステロールがたまって狭く細くなって血流が流れにくくなり起こります。なかでも血管内にできたコレステロールのたまりが急にやぶれて血栓が付着し、血流が極端に遅くなるのが「不安定狭心症」で急に心臓が苦しくなります。完全に詰まると「心筋梗塞」です。血流が止まって酸素が運ばれず筋肉が壊死していくわけです。
その前段階が粥(じゅく)状硬化であり、血管内にできたぶよぶよのプラークが破れると、血小板が集まってきて血の塊(血栓)を作り充満して血管が閉じてしまうわけです。
糖尿病や悪玉のコレステロール、メタボ肥満、それに中性脂肪などが高いと、余計血が固まりやすくなります。血栓が急激に詰まった場合、ものの1分で心停止になり突然死を招くわけです。
---わが国の救命状況は
私たちの創始者が31年前(昭和53年)に、各病院、行政などと相談して立ち上げた東京都CCUネットワークのデータから説明します。現在、このネットワーク(連絡協議会)には東京都内の参加基準に達する62の専門施設が加盟しており、東京で起こる心筋梗塞患者の95%が緊急入院されます。昭和57年には、病院に搬送後の「院内死亡率」が20%と高かったのですが、25年後の平成19年の統計では、6.4%(男性4.7%、女性8.3%)に下がりました。劇的な下がり方であり、世界的にもすごくいい成績です。
ただし、病院に運ばれる前に、現在でも100人のうち30人は「心停止」で突然死しているとされます。見過ごすわけにはいきません。早ければ早いほど治せます。ですから、自宅などで苦しくなったら、一刻も早く救急車を呼び病院に直ちに搬送できれば助かる確率は格段に上がります。
---患者の状況は
心筋梗塞で病院に運びこまれる人の平均年齢は男性は65歳、女性は76歳です。男性では、40代からの発症が多くなり60代がピーク。女性は50代から多くなりますが、80歳以上の人も目立ちます。全体的に見ると、40、50代で3分の1を占めます。20年前と比べると高齢化で男女とも発症の平均年齢が高くなっている半面、若年化の様相を呈していることも事実です。

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