メタボリックシンドロームという言葉とその概念は、近年急速に広まりましたが、この概念は急に生み出されたわけではありません。上半身肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症など複数の生活習慣病が重なると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まることは、以前より知られており、世界中で提唱され研究が進んできました。
源流としては、1949年から始まり現在も連綿と続く米国の「フラミンガム研究」があり、心血管疾患の原因となるものは単一ではない"マルチプル・リスクファクター(複合因子)"という概念がもたらされたことから始まります。この研究に刺激され、日本でも1961年から九州大学による「久山町研究」が行われ、多くの成果をあげています。
まず、1988年にスタンフォード大学のRevenが、ADA(アメリカ糖尿病協会)の年次学術集会で「シンドロームX」を提唱しました。これは、インスリン抵抗性を基盤として、耐糖能異常、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、低HDL血症、高血圧症が合併しやすくなり、こうした病態が虚血性心疾患発症リスクを高めるというものでした。
翌年1989年には、テキサス大学のKaplanが、肥満の中でも“上半身肥満”、今でいう内臓脂肪型肥満に加え、耐糖能異常、2型糖尿病、高トリグリセリド血症、高血圧症が集積した病態を「死の四重奏(the deadly quartet)」とし、この4つの病態の収束が動脈硬化性心血管疾患を招く「マルチプルリスクファクター症候群」と提唱しました。
また、テキサス大学のDeFronzoらは1991年、インスリン抵抗性が高インスリン血症、耐糖能障害、肥満、脂質代謝異常、高血圧の原因であると考え、これらの代謝性異常病態の集積を「インスリン抵抗性症候群」と提唱。
1994年には、大阪大学の松澤佑次らが、肥満症を内臓脂肪蓄積型と皮下脂肪蓄積型に分け、内臓脂肪蓄積型は、耐糖能異常や脂質代謝異常と関連し、これらに高血圧症を合併した病態を「内臓脂肪症候群」として、冠動脈疾患発症のハイリスク状態であることを報告しました。
図:メタボリックシンドローム概念の歴史
シンドロームX
死の四重奏
インスリン抵抗性症候群
内臓脂肪症候群
Reven 1988年
Kaplan 1989年
DeFronzo 1991年
松澤佑次 1994年
・インスリン抵抗性
・高インスリン血症
高インスリン血症
上半身肥満
肥満
内臓脂肪の蓄積
脂質代謝異常
(高TG血症/低HDL-C血症)
脂質代謝異常
(高TG血症)
脂質代謝異常
(高TG血症/低HDL-C血症
高LDL-C血症)
高脂血症
耐糖能異常
耐糖能異常
インスリン非依存型糖尿病
耐糖能異常
高血圧症
高血圧症
・高血圧症
・動脈硬化性心血管疾患
高血圧症

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